朝日連峰は最高峰の大朝日岳でも1870mで決して高い山ではありませんが、広い裾野を持つ雄大な山塊です。日本海に面している為、冬期は季節風をまともに受け降雪量が多いことから、真夏になっても多くの雪が残り、気象条件が厳しいことから標高以上の高山条件が揃っており、植生が豊かで多くの高山植物を見ることが出来ます。
以東岳(1771m)から大朝日岳にかけての縦走路には多くのお花畑が展開しています。
朝日連峰のもう一つの特徴は降雪が多いせいか水の質が良いことです。稜線付近でも小屋には良質の湧き水が豊富にあります。中部山岳と異なり、東北の山は管理人さんが常駐しない無人小屋が多いのですが、縦走中の連泊でもこれだけ水が豊富だと食事を作るのが苦になりません。
作品の追加、変更は随時行う予定ですので、ご了解下さい。
西朝日岳より見た大朝日岳
最終更新日;2024年4月23日
【キク科】
【キンポウゲ科】
【サクラソウ科】
【スイカズラ科】
【ツツジ科】
【ユリ科】
【ラン科】
(ここの並びは、あいうえお順)
以下の並びは、APGVに準拠。 探したい花の名前がわかっている場合は、トップページの【花の検索】から探すと全ての山のページが対象になります。
【ユリ科】
ヒメサユリ (ユリ科 ユリ属)
Lilium rubellum (姫小百合)
別名を乙女百合と言います。朝日連峰、吾妻山系、飯豊連峰などの山形、福島、新潟3県の亜高山帯や山地のみに分布するユリで、海外には分布しません。会津地方には、かなり低い場所にも自生地があります。
鮮やかなピンク色の花被片と黄色い葯が特徴です。
ユリ科植物は高山帯や亜高山帯に沢山分布しますが、ユリらしい花を咲かせるユリ属は本種とクルマユリくらいです。クルマユリには叱られそうですが、両者を比べたら美しさの点では絶対にこちらです。
尚、当Webサイトではユリ属のコオニユリも紹介していますが、コオニユリを高山植物と呼ぶのにはちょっと抵抗があります。勝手に紹介していていい加減な説明ですネ。
【ラン科】
オノエラン (ラン科 カモメラン属)
Galearis fauriei (尾上蘭)
植物図鑑などには中部地方以北と紀伊半島に分布するとありますが、私は秋田駒ヶ岳と朝日連峰以外では見掛けたがありません。海外には分布しません。朝日連峰では沢山の個体を見ることが出来ますが、花は何処かしら痛んでいて、写真に撮れるような個体は少ないです。
マツモトセンノウのように名前の由来に歌舞伎役者を連想するような和名ですが、この花の場合、「尾上」とは「尾根の上」という意味だそうで、実に色気のない名前です。名称にオノエが付く植物は、オノエリンドウなど他にもあります。
余談ですが、マツモトセンノウは花の形が歌舞伎役者の松本幸四郎の紋所に似ていることに由来します。
ショウキラン (ラン科 ショウキラン属)
Yoania japonica (鍾馗蘭)
高山植物写真館に入れたら叱られそうな花です。
撮影場所が大朝日岳から下山途中の標高1200m位の樹林帯なら高度不足ではなかろうと........。
当Webサイトでは、ハマナスやコオニユリ等も掲載していることですし...........。
言い訳がましいですネ。
北海道南西部から九州の屋久島まで広く分布します。海外では台湾、中国南部やインドのアッサム地方にも分布します。冷温帯落葉広葉樹林の林床に生育します。
分布を示すと何処でも見掛けそうな植物ですが、殆ど見掛けることはありません。ましてや写真のような大株は初めて見ました。
山地の比較的日当たりが悪い場所に生育する葉緑体を持たず菌類に寄生する腐生植物です。腐生植物とは、光合成を行わず菌根を形成し菌類より共生で栄養を得る植物です。鱗片状の葉がありますが、目立たないので葉の無い植物のようです。烏帽子を被った鍾馗の姿に似ていることから、この名前があります。
【キンポウゲ科】
ハクサンイチゲ (キンポウゲ科 イチリンソウ属)
Anemone narcissiflora subsp. nipponica (白山一花)
ハクサンイチゲは、どこの高山でも見られますし花期も6月から8月頃までと結構長いので何時登っても見られるありふれた花になっていました。しかも大雪山の圧倒されるような大群落を見てしまうと、あれ以上の素晴らしい撮影機会はもう無いと思い込んで何時の間にかカメラを向ける機会もなくなっていました。
しかし、本州(中部〜東北)に分布するのがハクサンイチゲで、主に北海道に分布するのは、エゾノハクサンイチゲです。
両者は厳密に棲み分けているのではなく、エゾノハクサンイチゲは北海道以外にも東北地方やサハリン等に分布します。この為、東北の高山では両者が混在します。両者の外観は非常に良く似ており区別のポイントが葉の切れ込み程度です。葉の終裂片が尖るのがハクサンイチゲ、尖らないのがエゾノハクサンイチゲです。厳密な区別が難しいので、今までは大雪山で撮ったものをハクサンイチゲとして載せていました。この為、今回両者を区別するとなるとハクサンイチゲを撮った写真が殆どないのです。その中からようやく見つけ出したハクサンイチゲです。
左の写真は朝日連峰で撮影した株なのでエゾノハクサンイチゲの可能性もありますが、葉先が尖っているのでハクサンイチゲだと思います。右の写真の株は南ア北岳で雪融け直後に撮影した開花したばかりの株です。寒さを防ぐ為なのかまだ花茎も伸びないうちに身を寄せ合うように固まって花を付けています。撮影場所が中部山岳ですし葉先も尖っているので、こちらはハクサンイチゲで間違いないと思います。登山シーズの頃には朝日連峰で撮影した株のように花茎を伸ばして、その先に花を咲かせます。
【サクラソウ科】
ヒナザクラ (サクラソウ科 サクラソウ属)
Primula nipponica (雛桜)
早池峰山と岩木山以外の東北地方の高山で見られるハクサンコザクラ亜属の白いサクラソウで、海外には分布しません。亜高山帯や高山帯の雪田の跡地や湿った草地に生えます。
サクラソウの仲間にはハクサンコザクラやエゾコザクラのように根生葉が内側に巻くもの(ハクサンコザクラ亜属)と、ユキワリソウのように外に巻くもの(ユキワリソウ亜属)とがあり、重要な見分けるポイントとなっています。
早池峰山には同じ白ですが、ヒメコザクラというユキワリソウ亜属のサクラソウが咲きます。
また、岩木山にはミチノクコザクラ(P. cuneifolia var. heterodonta)というハクサンコザクラ亜属のサクラソウが咲きます。
【ツツジ科】
アカモノ (ツツジ科 シラタマノキ属)
Gaultheria adenothrix (赤物)
北海道、本州、四国の山地帯から高山帯下部の林縁に分布し、海外には分布しません。
常緑の小低木です。名前の由来は、赤い実から「アカモモ(赤桃)」と呼ばれていたのが訛ってアカモノになったとのことです。 実は白い実もあり、シロミノアカモノというややこしい名前が付いています。
ツツジ科には釣り鐘型の小さな花をける仲間が多いのですが、萼の濃赤と花冠の純白のコントラストの美しさでは、この花が一番です。
別名はイワハゼ(岩櫨)です。
ハゼ(ハゼノキ)とはウルシ科ウルシ属の植物で、姿形はこの植物とは全く似てもいませんし、実の色も淡褐色です。ハゼは昔の人にとっては木蝋の原料として重要な植物であった為、この程度の類似でもハゼの仲間と考えていたようです。
【キク科】
シロバナニガナ (キク科 ニガナ属)
Ixeridium dentatum subsp. nipponicum ver. albiflorum f. leucanthum (白花苦菜)
ニガナの仲間も名前を調べるのには苦労をします。この写真も撮影当時は図鑑の写真との比較からクモマニガナの白花としてシロバナクモマニガナと紹介していました。
しかし、APG分類となった図鑑を眺めていると、学名も分類も以前とは変わってしまいました。葉が楕円型で茎を抱くなどの特徴から、シロバナニガナではないかと推定しています。
日本全土、中国、朝鮮半島、サハリンなど広く分布します。
朝日連峰では白花のニガナばかりで、黄色のニガナは全く見掛けませんでした。
主稜線ではあまり見掛けませんが、少し下った風当たりの弱い場所では大株を形成していました。
ミヤマウスユキソウ (キク科 ウスユキソウ属)
Leontopodium fauriei var. fauriei (深山薄雪草)
東北地方の秋田駒ヶ岳、焼石岳、鳥海山、月山、朝日連峰、飯豊山の高山帯に分布するエーデルワイスです。別名をヒナウスユキソウと言いホソバヒナウスユキソウの基準変種に当たります。特に朝日連峰の寒江山や南寒江山付近の大群落が有名です。
この花を見る為に昨年も登ったのですが、残念ながら既に花期を過ぎて枯れ花状態でした。そこで今年は昨年よりも2週間早く登りました。苞葉の綿毛が白いものが結構残っておりましたが、綿毛もふんわりした感じのものよりもべったりした感じの株が多く、今年も花の盛りは少し過ぎていたようです。南寒江山と寒江山の鞍部の大群落も既に終わりで、苞葉の綿毛も無くなり始めていました。
近縁種には、ハヤチネウスユキソウ、オオヒラウスユキソウ、エゾウスユキソウ、ヒメウスユキソウ及びミネウスユキソウがあります。
【スイカズラ科】
タカネマツムシソウ (スイカズラ科 マツムシソウ属)
Scabiosa Japonica var. alpina (高嶺松虫草)
本州(中部以北)と四国の亜高山帯の草地や砂礫地に分布し、海外には分布しません。
初秋の高原を彩る花として有名なマツムシソウ(ver. Japonica)の高山変種ですが、私はこの花が咲いている山に登ったことがなかったようで、今まで見たことはありませんでした。基準変種に比べて頭花が大きく濃色し、草丈も低くなるなど高山植物らしくなっています。尤も草丈が低くなったといっても30cmくらいはあります。
当日は悪天候で強い風が吹いており、頭花が揺れて撮影には苦労しました。
北海道にはエゾマツムシソウが分布します。
以前はマツムシソウ科として独立していましたが、APG分類ではスイカズラ科に含まれました。
尚、当ページに掲載した写真の著作権は中村和人にあります。
無断転載しないで下さい。
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