早池峰山
早池峰山(1,917m)は岩手県第二位の高さの山で、早池峰信仰の山としても有名です。 早池峰山は塩基性の強い蛇紋岩の巨岩で全山が覆われ、この特異な環境から独自の進化を遂げた植物が多い山です。 ハヤチネウスユキソウ、ヒメコザクラ、ナンブトラノオなど早池峰山のみにしか生育しない固有種が沢山あります。 又、サマニヨモギやトチナイソウなどのように早池峰山を南限とする北方系の高山植物も多く見られます。 この為、早池峰山の高山植物は国の特別天然記念物に指定されております。
早池峰山の南には、遠野に至る道を挟んで薬師岳が対峙しています。僅か道路1本隔てているだけですが、早池峰山が塩基性の蛇紋岩の山であるのに対して、こちらは酸性の花崗岩の山です。ここでは、ヒカリゴケやオサバグサの群落を見ることが出来ます。
早池峰山がある花巻市の「早池峰花カレンダー」は、以前は素晴らしいサイトでしたが、現在はPDF1枚だけの寂しいサイトになりました。早池峰山の植物の情報は、早池峰山の自然公園保護管理員の方が作成しているブログの「ほしがらす通信」などをご覧下さい。

作品の追加、変更は随時行う予定ですので、ご了解下さい。
小田越付近より見た早池峰山
最終更新日;2025年4月24日

【アブラナ科】 【キキョウ科】 【キク科】 【キンポウゲ科】 【ケシ科】 【サクラソウ科】 【シュロソウ科】 【スミレ科】 【タデ科】 【チシマゼキショウ科】 【ツツジ科】 【ナデシコ科】 【ハマウツボ科】 【バラ科】 【ベンケイソウ科】 【ユリ科】 【リンドウ科】 (ここの並びは、あいうえお順)

以下の並びは、APGVに準拠。 探したい花の名前がわかっている場合は、トップページの【花の検索】から探すと全ての山のページが対象になります。
【チシマゼキショウ科】
チシマゼキショウ (チシマゼキショウ科 チシマゼキショウ属)
Tofieldia coccinea ver. coccinea  (千島石菖)
 
本州の中部以北と北海道の高山帯の岩礫地や岩隙に生える常緑の多年草です。海外では、モンゴル、シベリア、サハリン、カムチャッカ半島、アリューシャン列島、アラスカ、グリーンランドと広く分布します。
どこの山でも見られそうなのですが、花期が早いのか私は早池峰山にヒメコザクラを見に行った時に2度見掛けただけです。何れも貧弱な株でしたので、『そのうち良い株が見つかるさ』と思っていました。 この写真は、雨が降る中で撮影したものです。貧弱な株で超駄作の写真なので放っておいたのですが、APG分類でユリ科からチシマゼキショウ科として独立して、科を代表する植物名になったので、急遽古いポジフィルムからスキャンし直しました。
石菖の名前の由来は、岩場に生えて、葉が菖蒲(ショウブ)に似ているからですが、ショウブ科にはセキショウ(石菖 Acorus gramineus)という植物もあるので、ややこしいです。

【シュロソウ科】
コバイケイソウ (シュロソウ科 シュロソウ属)
Veratrum stamineum var. stamineum  (小梅蕙草)
 
早池峰山頂直下の一面のコバイケイソウの群落です。 高山湿原などの比較的湿った草地に群落を作ります。 この場所は早池峰山では比較的遅くまで雪田が残る処です。 撮影時の天気が悪く開放に近い絞りの為、被写界深度が浅くなって手前の花がボケてしまいました。 1981年には小さな群落だったのですが16年後の1997年には大きな群落になっていました。その後、早池峰山には何回か登っていますが、この時のような大群落は見掛けていません。
本州の中部以北と北海道の亜高山帯から高山帯の草地に分布し、海外には分布しません。 花が梅に葉が蕙蘭という東洋蘭に似ていることから、この名前があります。 花は美しいのですが有毒植物です。春の芽吹きの頃は、山菜のギョウジャニンニクやオオバギボウシと良く似ている為か誤食による中毒事故がしばしば報道されます。なお、従来はユリ科シュロソウ属でしたが、APG分類ではシュロソウ科シュロソウ属に変わりました。 科や属の名前となったシュロソウ(棕櫚草)の由来については、タカネシュロソウをご参照下さい。

【ユリ科】
チシマアマナ (ユリ科 チシマアマナ属)
Lloydia serotina  (千島甘菜)
 
本州の中部以北と北海道の高山の乾いた草地や岩場に分布します。海外では周北極寒冷帯や高山帯に広く分布します。 咲き始めの頃はカップ状の花を下向けにつけますが、開花すると横からやや上向きになります。
中部以北の高山では普通に見られますが、花期が早いので、登山シーズン中はあまり見かけません。 早池峰山では、6月にヒメコザクラと一緒に咲いています。
チシマアマナは、チューリプ属のアマナ(Tulipa edulis)に似ていて千島の得撫(ウルップ)島で発見されたのでこの名がありますが、チューリップ属ではなくチシマアマナ属です。チシマアマナ属の植物は日本には本種を含めて2種が分布するだけです。 なお、名前の由来となったアマナはチューリップ属から分離してアマナ属(Amana属)となりましたが、APGV分類では再びチューリップ属に戻っています。

【ケシ科】
オサバグサ (ケシ科 オサバグサ属)
Pteridophyllum racemosum  (筬葉草)
 
日本特産の1属1種の植物で、海外には分布しません。植物図鑑などには、本州中部以北の山に分布と書かれていますが、この花が見られる山は限られます。
写真の花は、厳密に言えば早池峰山のものではありません。早池峰山の南側の薬師岳で撮影しました。 花期も結構早いです。6月に早池峰に登り、小田越に降りてきたら、道を挟んだ薬師岳の登山道にも是非入って下さい。5分もしないうちにアオモリトドマツの林床で、この花の群落に出会うことができます。
シダのような根生葉を機織りの筬(オサ)に見立てて、この名前があります。

【キンポウゲ科】
ミヤマオダマキ (キンポウゲ科 オダマキ属)
Aquilegia flabellata var. pumila  (深山苧環)
 
本州中部以北と北海道の草地や礫地に分布します。海外ではサハリンや朝鮮半島北部にも分布します。 キンポウゲ科の花には変わった構造のものが多いのですが、この花も変わった方に属するでしょう。 花弁は青紫色ですが先端のみ白色の楕円形です。長く伸びた距は青紫色で先端は内曲して小球となります。萼は青紫色で外側から巻き込んでいます。 この姿を、糸を巻いて玉状または環状にした苧環にたとえてこの名前があります。 どこの高山でも見られますが、早池峰山では個体数が結構多いです。 しかし、写真を撮るとなると絵になる株は意外と少ないのです。
園芸用のオダマキは本種を改良したものです。

ミヤマカラマツ (キンポウゲ科 カラマツソウ属)
Thalictrum tuberiferum var. tuberiferum  (深山唐松)
 
北海道〜九州までの山地帯〜亜高山帯の林床に生育します。海外では朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿岸地方にも分布します。 早池峰山では個体数が結構多いです。
花弁はありません。 通常花びらのように見える萼片も開花時には散ってしまうので、蕊の束だけになって咲いています。 実際の蕊の長さは、1cm程度ですからサムネイルの写真よりもずっと小さい花です。
なお、左の写真は南アルプス北岳で撮影したものです。

【ベンケイソウ科】
ホソバイワベンケイ (ベンケイソウ科 イワベンケイ属)
Rhodiola ishidae  (細葉岩弁慶)
 
本州の中部以北、北海道の高山の岩礫地に分布します。 以前ヒメコザクラに逢う為に登った時に山頂の早池峰神社奥宮の土台に本種の見事な株が生えているのを見かけたことがあります。花期には早かったので写真には撮りませんでしたが見事な株でした。次に登った時は期待していたのですが、影も形もありませんでした。雌雄異株の植物で雌株は受粉後に子房が紅くなります。
中部地方の高山には近縁種のイワベンケイが生育します。

【バラ科】
ナンブトウウチソウ (バラ科 ワレモコウ属)
Sanguisorba obtusa  (南部唐打草)
 
早池峰山に特産する固有種です。 早池峰山の固有種は登山シーズンの始めの頃に咲くものが多いのですが、この花は遅咲きです。 この写真は8月上旬に撮影したのですが、この頃でもまだ花期には早く、花穂が少なくて写真になるような株は少ないです。お盆の頃が良いのかもしれません。
ワレモコウ属の植物で、近縁のタカネトウウチソウ(S. stipulata)やエゾトウウチソウ(S. japonensis)が花穂の下の方から咲き上がる(無限花序)のに対して、本種は花穂の先端から咲き下がり(有限花序)ます。
名前の由来は、花穂を中国の打紐に見立てています。

ミヤマヤマブキショウマ (バラ科 ヤマブキショウマ属)
Aruncus dioicus var. astilboides  (深山山吹升麻)
 
北海道から九州、海外でも北半球の亜寒帯に広く分布するヤマブキショウマ(var. kamtschaticus)の近縁種で早池峰山固有種です。 植物図鑑によれば、
全体に小型で、葉に厚みがあり、袋果は熟しても上向きのまま.......
何のことだか良くわかりませんネ。 私だって、早池峰山で撮ったから、ミヤマヤマブキショウマだと思っているだけですから。
早池峰山の岩場では、結構多く見掛けますが、ハヤチネウスユキソウと違って有名ではありませんので、この花に注目している人は少ないです。 早池峰山の固有種なのですから、"ハヤチネヤマブキショウマ"とか"ナンブヤマブキショウマ"とでも名付ければ、もう少し注目されるのかもしれません。

【スミレ科】
キバナノコマノツメ (スミレ科 スミレ属)
Viola biflora var. biflora  (黄花の駒の爪)
 
北海道から九州(屋久島)までの山地〜亜高山帯〜高山帯の湿った草地や渓流沿いの岩隙などに生育します。海外でも北半球の亜寒帯に広く分布します。 近縁のタカネスミレが岩場や砂礫地帯に生育して、いかにも高山植物という感があるのに対して、キバナノコマノツメは亜高山を主な棲み家とし弱々しい感じがします。
葉の形を馬の蹄に見立ててこの名前があります。 日本のスミレで高山に咲くのは、この2種以外にも幾つかありますが、白いシレトコスミレ(Viola kitamiana)と青いアポイタチツボスミレ以外の花色は黄色です。精々葉の形で区別するだけですから、日本の高山スミレは色の点では寂しいです。 但し、どのスミレも産地による差違があり区別は容易ではありません。 キバナノコマノツメには至仏山のジョウエツキバナノコマノツメ(f. glabrifolia)や南アルプスのアカイシキバナノコマノツメ(ver. akaishiensis)といった品種や変種があります。

【アブラナ科】
ナンブイヌナズナ (アブラナ科 イヌナズナ属)
Draba japonica  (南部犬薺)
 
早池峰山以外では北海道の夕張岳と戸蔦別岳のみに特産する蛇紋岩植物です。 日本産のアブラナ科の高山植物は、ほとんどが白い花ですが、本種とヤマガラシのみが黄色い花です。
良く分枝して大株になり、先端に鮮やかな黄金色の花を沢山つけます。 花期が早く、6月が見頃です。この花が咲く頃には、まだ他の高山植物が少ないので、蛇紋岩の崩壊地で非常に目立ちます。
植物名にイヌがつくのは、他にもイヌタデなどの例がありますが、本物のタデ(薬味に使うヤナギタデ)に比べて辛くないとか役に立たないという意味で付けられた名前です。イヌナズナもナズナに似ているが役に立たないという説と、ナズナに似ているが異なっているという意味の「否ナズナ」が訛ってイヌナズナとなったという説があります。

【タデ科】
ナンブトラノオ (タデ科 イブキトラノオ属)
Bistorta hayachinensis  (南部虎の尾)
 
早池峰山の固有種です。 本州から北海道までの普通の高山には近縁種のエゾイブキトラノオが生育し、高山草原に大群落を形成しているのを見かけます。 早池峰山にはエゾイブキトラノオは生育せず、蛇紋岩帯の岩場に本種がぽつん,ぽつんと咲いています。この写真の背景の岩も蛇紋岩です。 エゾイブキトラノオよりも花穂が短く、草丈も低く、根葉は長楕円形で光沢があります。

【ナデシコ科】
カトウハコベ (ナデシコ科 ノミノツヅリ属)
Arenaria katoana var. katoana  (加藤繁縷)
 
本州の早池峰山と至仏山と谷川岳、北海道の夕張岳と日高山脈のみに稀産する蛇紋岩植物です。海外には分布しません。 和名も学名も発見者の加藤泰秋氏の名前に由来するとされます。実際には、1905年に牧野富太郎が早池峰山で発見し、その採集行のスポンサーであった加藤泰秋子爵の名を取って命名したと、 ほしがらす通信(早池峰山の自然公園保護管理員の方が作成しているブログ)には掲載されています。
早池峰山の固有種や稀生種には、ハヤチネウスユキソウのように目立つ花もありますが地味なものが多いです。 早池峰山で見られる小型のハコベの仲間は、次のホソバツメクサと本種くらいです。花は似ていますが葉が異なるので見分けは容易です。 葉の形が判り易いようにアップの写真を載せていますが、花径は6mm程度の小さな花です。 本種も激減しています。早池峰山には6回位登っていますが、まだ2株しか見かけていません。

ホソバツメクサ (ナデシコ科 タカネツメクサ属)
Minuartia verna var. japonica  (細葉爪草)
 
本州中部以北と北海道の高山帯の砂礫帯に分布します。但し、本州では中部山岳を除くと早池峰山、至仏山、谷川岳と本種が分布する山は限られます。海外には分布しません。 細い茎が分枝して株状に広がります。 小さな白い花を沢山つけ、印象が深い花です。
早池峰山ではコメガモリ沢ではあまり見かけませんが、小田越ルートの下部に多いようです。

【サクラソウ科】
ヒメコザクラ (サクラソウ科 サクラソウ属)
Primula macrocarpa  (姫小桜)
 
早池峰山の固有種です。 花期が早く、6月初旬から中旬に咲きます。年によっては5月に咲いてしまうこともあります。
この花には、なかなか巡り会えず、早池峰山4度目の挑戦でようやく出会うことが出来ました。 花径は1cm程度、草丈も4〜8cm程度で、日本産のサクラソウの仲間ではいちばん小さいです。
かつて、本種が岩手県内の大東町(現在は一関市)の蛇紋岩地でも自生していたという報道がありましたが、現在は確認されていないそうです。
早池峰山と岩木山以外の東北の高山には、ヒナザクラという白いサクラソウが咲きますが、これはハクサンコザクラ亜属のサクラソウで、根生葉が内側にカールします。 これに対して、本種はユキワリソウ亜属に分類される白花のサクラソウで、根生葉が外側にカールする特徴を持っています。
ユキワリソウ亜属のサクラソウには、ユキワリソウレブンコザクラサマニユキワリユウパリコザクラ等があります。

【ツツジ科】
ギンリョウソウ (ツツジ科 ギンリョウソウ属)
Monotropastrum humile  (銀竜草)
 
日本全土で見られます。また東アジアの温帯地方に広く分布します。 山地の森の中の湿り気のある場所に生えます。低山でも見られるので高山植物写真館に入れるのはどうかと思っていましたが、条件が合えば亜高山帯でも生育します。写真の株は早池峰山の小田越から少し登った樹林帯の中で撮影したものですが、私は南アルプスの白根御池小屋付近の樹林帯でも見掛けたことがあります。 ショウキランのように菌類に寄生する腐生植物です。 この為、葉緑素がないので全体が白色で茎には葉の退化した鱗片葉が互生します。別名がユウレイタケです。
従来はイチヤクソウ科でしたがAPG分類ではイチヤクソウ科が全てツツジ科に含まれ、ツツジ科ギンリョウソウ亜科ギンリョウソウ属に変わりました。ツツジのイメージは全く感じられませんがDNA的には近いのでしょうね。APG分類でツツジ科になった驚きが、本種を掲載する最大の動機になったのかもしれません。

【リンドウ科】
ミヤマアケボノソウ (リンドウ科 センブリ属)
Swertia perennis subsp. cuspidata  (深山曙草)
 
早池峰山、南北アルプス、八ヶ岳及び北海道(中央高地、夕張山系・日高山脈・千島など)の高山の湿った岩石礫や草地に分布します。海外ではサハリンに分布します。 なお、北海道に分布するものは変種のエゾミヤマアケボノソウとする見解もあります。
こんな花の形をしていますが、リンドウ科の植物です。離弁花のように見えますが花冠が深く5裂した合弁花です。紫に黒がかかった独特の花色で、花冠の裂片に散らばる斑点が印象的です。各裂片の基部にある2個のイボ状のものは密腺です。
湿った場所を好む為、早池峰山だとコメガモリ沢を登るコースの上部に多く見られます。

【ハマウツボ科】
ミヤマシオガマ (ハマウツボ科 シオガマギク属)
Pedicularis apodochila  (深山塩竈)
 
本州中部以北、北海道(日高山地、択捉島)の高山の草地に分布し、海外には分布しません。 お花畑の赤系色の花の代表選手みたいな花です。 近縁のタカネシオガマと棲み分けているのでしょうか。 タカネシオガマが咲いている山では本種をみかけないし、本種が生育しているところではタカネシオガマを見かけたような記憶はありません。
葉は羽状に全裂し、裂片は更に羽状に深裂します。シオガマギク属の仲間は、このように美しい葉をもつ仲間が多いのが特徴です。 この為、「葉まで美しい」を「浜で美しいのは塩竈」と洒落てシオガマになったという説明は、多くの本に載っています。しかし、海水を煮詰めて塩を作る「かまど」の塩竈が美しいとはとても思えません。 長年疑問でしたが、ウィキペディアには、「世阿弥の謡曲『松風』の中に「浜で美しいのは塩竈」の言葉がある。」という説明が載っていました。
シオガマギク属は、以前の分類ではゴマノハグサ科でしたが、APG分類ではハマウツボ科に移りました。

【キキョウ科】
ハクサンシャジン (キキョウ科 ツリガネニンジン属)
Adenophora triphylla var. hakusanensis  (白山沙参)
 
別名をタカネツリガネニンジンといい、山野に生えるツリガネニンジン(Adenophora triphylla var. japonica)の高山型です。ツリガネニンジンよりも背丈が低く花序が詰まり花は密集して咲きます。最近の分類では、両者には決定的な違いはなく、両者を同一種とするようです。
しかし、ハクサンシャジンは古くから高山植物の中では有名でしたから当面はこの名前を残しておきたいと思います。花色は変化に富み、通常は淡紫色ですが、中には左の写真のように濃い紫色の個体もあります。早池峰山に咲いているものは、濃い色の個体が多いような気がします。
本州中部以北と北海道の亜高山〜高山帯ならば、どこの山でも見られます。海外には分布しません。但し、ツリガネニンジンは北海道から九州の山地に普通に見られ、海外ではサハリンや東シベリアに分布します。

【キク科】
ミヤマアズマギク (キク科 アズマギク属)
Erigeron thunbergii subsp. glabratus ver. glabratus  (深山東菊)
 
本州中部以北と北海道の高山帯の礫地や礫の多い草地に分布します。海外では朝鮮半島北部、中国東北部、シベリア、カムチャッカ半島などにも分布します。 高山でピンク色の代表みたいな花で、多くの高山で普通に見られます。 北日本に広く分布するアズマギク(subsp. thunbergii )の高山型亜種です。
このピンク色の花にも最近異変が起きているようです。 左の写真は1997年に撮影した写真ですが、最近は右の写真(2006年撮影)のように青色が目立つようになりました。 これは早池峰山ばかりでなく他の山でも同様です。酸性雨の影響なのでしょうか。
稀に白花があります。右の写真の左上隅に嵌め込んであります。
ミヤマアズマギクには地方変異が多く、ジョウシュウアズマギクアポイアズマギクなどの変種があります。 また、ミヤマアズマギクの別品種には、ユウバリアズマギクがあります。

ハヤチネウスユキソウ (キク科 ウスユキソウ属)
Leontopodium hayachinense  (早池峰薄雪草)
 
早池峰山の高山帯のみに生育する固有種です。 日本産のウスユキソウの仲間では最も大型で、ヨーロッパアルプスのエーデルワイスにいちばん似ている花です。 ハヤチネウスユキソウの白いフランネルのような部分は花ではありません。 苞葉と呼ばれる葉っぱです。 この苞葉の厚みや綿毛の量には個体差が結構あります。 因みに花は、中央の黄色い部分です。
属の学名のLeontopodiumは、ライオンの足という意味で、白く展開する苞葉を、爪を広げたライオンの足にたとえているのです。
見頃は、年によって差がありますが7月20日前後です。 この頃ですと、まだ梅雨が明けきっていない場合が多く、右の写真のように雨に打たれたハヤチネウスユキソウも風情があります。
近縁種には、オオヒラウスユキソウミヤマウスユキソウホソバヒナウスユキソウエゾウスユキソウヒメウスユキソウ及びミネウスユキソウがあります。

尚、当ページに掲載した写真の著作権は中村和人にあります。 無断転載しないで下さい。
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