大雪山は北海道の屋根とも言われ、北海道の最高峰である旭岳(2,290m)をはじめ、北海岳、白雲岳、忠別岳、トムラウシ山などの多くの峰が集まる山塊の総称です。
アイヌ語ではヌタクカムウシュペと呼ばれ、神々の住む山という意味だそうです。
大雪山はその雄大な風景もさることながら、日本最大の高山植物の宝庫でもあります。
大雪山は高山植物の交差路に当たり、カムチャッカ、千島方面から南下した花、シベリア、サハリンから南下した花に加えて本州方面から北上した花が一緒になって、雄大なお花畑を形成しています。
ホソバウルップソウやエゾハハコヨモギなどの固有種や日本では大雪山でしか見られないキバナシオガマなどが咲き誇ります。
お花畑のスケールも雄大で、五色が原のハクサンイチゲなどは花平線と言ってもいいくらい、見渡す限りの花の海が続きます。
又、高山植物の女王とも言われるコマクサを唯一食草とするウスバキチョウは、大変に美しい蝶です。大雪山の過酷な自然環境の中で、2度の越冬の末に成虫になります。
アサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲといった大雪山でしか見られない貴重な蝶も生息しています。
作品の追加、変更は随時行う予定ですので、ご了解下さい。
平ヶ岳〜忠別沼間の無名峰(1833m)より
最終更新日;2024年8月11日
【イワウメ科】
【オオバコ科】
【オトギリソウ科】
【カヤツリグサ科】
【キク科】
【キンポウゲ科】
【ケシ科】
【サクラソウ科】
【スイカズラ科】
【スミレ科】
【タデ科】
【ツツジ科】
【ナデシコ科】
【ハマウツボ科】
【バラ科】
【フウロソウ科】
【マメ科】
【ムラサキ科】
【ユキノシタ科】
【リンドウ科】
(ここの並びは、あいうえお順)
以下の並びは、APGVに準拠。 探したい花の名前がわかっている場合は、トップページの【花の検索】から探すと全ての山のページが対象になります。
【カヤツリグサ科】
エゾワタスゲ (カヤツリグサ科 ワタスゲ属)
Eriophorum scheuchzeri var. tenuifolium (蝦夷綿菅)
本州の高層湿原などに広く分布するワタスゲと殆ど区別がつきませんが、エゾワタスゲは大雪山の高層湿原に特産します。ワタスゲとの違いは長く伸びる地下匐枝を出し、茎をまばらに出して株を作らないのだそうです。また、茎もワタスゲよりは低いそうです。素人には殆ど判らない違いなので、今まではワタスゲと紹介しておりました。しかし大雪山に特産する種であることから、今回別種として紹介することにしました。
化雲岳からの長い下山道を下り、天人峡に至る登山道の途中にある第一公園付近で見事なエゾワタスゲの群落に出会いました。黄色く点在する花は、エゾキスゲ(Hemerocallis lilioasphodelus var. yezoensis)です。
【ケシ科】>
コマクサ (ケシ科 コマクサ属)
Dicentra peregrina (駒草)
明治時代の文士"大町桂月"が高山植物の女王と称えた花です。
日本産の高山植物のなかでも美しい花の一つです。
花の形が馬の顔に似ているので駒草といいます。
葉も羽状に細かく裂けて結構美しいです。
他の植物が育成しないような乾燥した砂礫地に点々と群落を作っています。
本州中部山岳(御嶽山が西限、中央アルプスが南限)以北と北海道の高山の砂礫帯に分布します。海外ではカムチャッカ半島、サハリン、シベリア東部に分布します。北海道のコマクサは小振りですが色が鮮やかなものが多いようです。本州のコマクサは、株は全般に大きいですが色が淡いように思います。
赤花は大雪山で撮影したものですが稀に白花があります。シロバナコマクサ(f. alba)は八ヶ岳で撮影したものです。
全草にアルカロイド系のモルヒネ様物質を含んでおり、昔から健胃、鎮痛薬として腹痛に用いる薬草として利用されていました。 この為、木曽駒ヶ岳や御嶽山などでは野生種は採り尽くされてしまいました。
現在、中央アルプスで見られるものは人為的に植えられたものです。
また、美しいことから本来の分布域以外でも観光目的等で人為的に植えられたものがあり、本来分布していない白山などでも見られます。この為、国内外来種として駆除しているそうです。
【キンポウゲ科】
エゾノハクサンイチゲ (キンポウゲ科 イチリンソウ属)
Anemone narcissiflora subsp. sachalinensis (蝦夷の白山一花)
本州の山で見掛けるハクサンイチゲは高山草原の代表的なメンバーであり、あまりにもありふれているので普段はカメラさえ向けません。しかし大雪山では違います。五色が原では一面のハクサンイチゲのお花畑の遙か向こうにトムラウシ山が見えるのですが、水平線ならぬ花平線に浮かぶ島のようです。こんな雄大なお花畑は日本では大雪山以外では絶対に見られません。
しかしながら、このような素晴らしい風景が見られたのも昔のことになりました。地球温暖化の影響なのか五色ヶ原の乾燥化が進んでいるようです。今では笹原だらけとなり、高山植物は殆ど見掛けなくなりました。激変の様子は、ここをクリック してください。
尚、正しくは北海道に分布するのはエゾノハクサンイチゲで、本州(中部〜東北)に分布するのがハクサンイチゲです。両者の区別のポイントが葉の切れ込み程度ですし、中間型もあって区別するのは非常に難しいです。この写真の場合、撮影場所が大雪山なのでエゾノハクサンイチゲで間違いないと思います。また、ハクサンイチゲは国内のみですが、エゾノハクサンイチゲはサハリン、カムチャッカ半島、ロシア沿岸地方にも分布します。
エゾイチゲ (キンポウゲ科 イチリンソウ属)
Anemone soyensisi (蝦夷一花)
北海道の山地帯から高山帯の林縁や草地に生えます。北海道とサハリンに分布します。
茎葉は3出複葉で3個が輪生します。近縁種のヒメイチゲに比べて葉の幅が広いので、別名がヒロハヒメイチゲ(ヒロバヒメイチゲ)とも言います。
花弁のように見える萼片は、ヒメイチゲでは5枚ですが、本種は5〜7枚あります。
写真は萼片が6枚のもの、右上の円内の写真は7枚のものです。
ミツバオウレン (キンポウゲ科 オウレン属)
Coptis trifolia (三葉黄蓮)
漢方薬として有名な「黄蓮」の同属近縁種です。根生葉が3出複葉なのでこの名前があります。
北海道と本州中部以北の亜高山帯〜高山帯の森林の林縁などで見かけます。海外では北半球の寒帯〜亜寒帯に広く分布します。
キンポウゲ科の植物なので、花のように見える部分は萼です。花弁は雄蘂のように見える黄色い部分です。
尚、漢方薬に使われる「黄蓮」は、コセリバオウレン(C. japonica var. Japonca)とその変種のキクバオウレン(var. anemonifolia)とセリバオウレン(ver. major)です。
チシマノキンバイソウ (キンポウゲ科 キンバイソウ属)
Trollius riederianus (千島の金梅草)
別名をキタキンバイソウと言います。北海道の大雪山系から知床山地の高山帯に分布します。海外ではサハリン、カムチャッカ半島、アリューシャン列島、ロシア沿岸地方にも分布します。
この写真の花を以前は誤って『シナノキンバイ』と紹介しておりました。チシマノキンバイソウとシナノキンバイは非常によく似ています。違いは花弁と雄蘂の長さが同程度なのが「チシマノキンバイソウ」で、花弁が雄蘂より短いのが「シナノキンバイ」です。
今般、中部山岳で写したシナノキンバイと比較して花弁の長さの違いに気付き、古いフィルムからスキャンし直しました。尤もキンポウゲ科の花ですから、花弁のように見えるのは萼片で花弁自体は線形で雄蘂と区別がつき難い形をしています。
【ユキノシタ科】
クモマユキノシタ (ユキノシタ科 チシマイワブキ属)
Micranthes laciniata (雲間雪の下)
別名をヒメヤマハナソウと言います。
大雪山、夕張岳、日高山地北部の高山帯の湿った岩礫地に生育します。海外では朝鮮半島北部やサハリンに分布します。
高山に咲くユキノシタ科の植物は結構多いのですが、クモマユキノシタは花の形がユキノシタらしい格好をしています。
ロゼット状の根葉から長い花茎が伸びてその先に花をつけます。
本来は湿った場所を好む花ですが、砂礫帯でも良く見かけます。この株は大きな岩の間の窪みに根を伸ばし、水分確保に努めているようです。
チシマクモマグサ (ユキノシタ科 ユキノシタ属)
Saxifraga merkii var. merkii (千島雲間草)
日本では大雪山、夕張岳、知床半島、千島に分布します。海外ではシベリア、カムチャッカ半島に分布します。
北アルプスなどに稀産のクモマグサ(var. idsuroei)の基準変種です。
円形の花弁は付け根が細い柄となっているので面白い花型となっています。
ユキノシタ科の植物は、雪田の跡などといった湿った場所を好みます。
このような場所はサクラソウ科などの目立つ連中も好む場所でもあるのですが、派手な花といっしょに咲いているユキノシタ科の地味な花も結構捨てがたい魅力があります。
【マメ科】
エゾオヤマノエンドウ (マメ科 オヤマノエンドウ属)
Oxytropis japonica var. sericea (蝦夷御山の豌豆)
大雪山など北海道中央高地に特産します。本州に分布する基準変種オヤマノエンドウの変種です。高山の砂礫帯に生育し、オヤマノエンドウに比べて茎、葉、花序に長い軟毛を密に生やすので葉などは白く見えます。
変種名のsericeaは、毛が多いという意味だそうです。誰でもこの花を初めて見た時は、そう感じます。
【バラ科】
チングルマ (バラ科 ダイコンソウ属)
Geum pentapetalum (稚児車)
本州中部以北と北海道の高山ならば、どこの山でも見られ、雪田や雪渓の周辺の湿った高山草原の代表的な花です。海外ではサハリン、カムチャッカ半島、アリューシャン列島に分布します。
どこの山でも見られますが、大群落となると大雪山が一番でしょう。
草ではなく落葉性の矮性低木です。
茎はよく分枝してマット状に広がるので、非常に大きな株となり、この大株が草原に群れる姿は圧巻です。
花が終わると、長い毛を持つ小さな果実をつけます。
図鑑などには、和名の由来は『この長い毛が捩れて風にそよぐ姿を稚児車に見立てた名前が転じたもの』だと書いてあります。しかし、玩具の名前に稚児車というものはないそうです。
メアカンキンバイ (バラ科 タテヤマキンバイ属)
Sibbaldia miyabei (雌阿寒金梅)
雌阿寒の名前がついていますが、雌阿寒岳以外では硫黄山、羅臼岳、斜里岳、大雪山系、羊蹄山の北海道の高山と千島に分布します。
メアカンキンバイは、新エングラー体系の分類ではミヤマキンバイと同じキジムシロ属でしたが、APG分類ではタテヤマキンバイ属に含まれました。
大雪山にはミヤマキンバイも分布しますが、葉の形が異なります。3出複葉の小葉はやや厚く光沢が無く灰緑色を帯び、各小葉は幅の狭い卵形で基部はくさび形で先端が3裂します。ミヤマキンバイも3出複葉ですが、光沢のある大きな葉で葉脈が目立ち、小葉の縁には粗い鋸歯があります。
マルバシモツケ (バラ科 シモツケ属)
Spiraea betulifolia var. betulifolia (丸葉下野)
ハイマツ帯の林縁から砂礫帯まで色々な場所で見かけます。国内では北海道、関東北部以北、白山の亜高山帯や高山帯に分布します。海外では東シベリア、サハリンに分布します。
地域による変異の多い植物で、大雪山の場合、次項で紹介する変種のエゾマルバシモツケ(ver. aemiliana)と生育分布が重なる為、区別がつき難いです。
マルバシモツケは、エゾマルバシモツケよりも花序が大きくて、花序につく花数が多いです。
左上の円内が葉の部分を拡大した写真です。マルバシモツケは葉の鋸歯が基部を除いてあり、鋸歯はやや深いといった特徴があります。
シモツケの仲間には、他にもイワシモツケ(S. nipponica var. nipponica)などがあり、区別が難しいです。
写真の株はイソツツジと混生しています。丸い葉が本種のもので、細長い葉はイソツツジです。
エゾマルバシモツケ (バラ科 シモツケ属)
Spiraea betulifolia var. aemiliana (蝦夷丸葉下野)
前項で紹介したマルバシモツケ(ver. betulifolia)の変種です。国内では北海道のみに分布しますが、海外では東シベリア、カムチャッカ半島、北米などにも分布します。
大雪山の場合、マルバシモツケの生育分布と重なりますので区別がつき難いです。
マルバシモツケに比べて、花序は小型で花数も少ないです。
左上の円内が葉の部分を拡大した写真です。葉の形はマルバシモツケに似ていますが、全体に小型で葉は幅広くて厚く、葉脈がより強く凹んでおり、鋸歯が浅いことが特徴です。
【スミレ科】
エゾタカネスミレ (スミレ科 スミレ属)
Viola crassa subsp. borealis (蝦夷高嶺菫)
タカネスミレの分類は非常に難しく、幾つかの亜種があります。岩手山など東北北部の山に分布するタカネスミレ(V. crassa subsp. crassa)が基準亜種で、北海道(大雪山、夕張山地、日高山脈、羊蹄山、知床半島)に分布するものはエゾタカネスミレとして区別されます。海外には分布しません。葉に毛と光沢が無いのがエゾタカネスミレの特徴だと言われましてもネ。確かに毛は生えていませんが、光沢の程度はなかなか判定し難いですよね。この写真の株の葉も結構光沢があります。尤も、私の場合は単純に大雪山で撮ったという理由が大きいです。
タカネスミレの仲間は、秋田駒ヶ岳や八ヶ岳でもよく見かけるのですが、なかなか花期が合わず、良い写真は撮れていません。八ヶ岳のものはヤツガタケキスミレとして別の亜種です。
ジンヨウキスミレ (スミレ科 スミレ属)
Viola alliariifolia (腎葉黄菫)
葉が腎臓の形に似ていることからこの名前がありますが、腎臓には見えないですよネ。
茎葉は、丸みを帯びた鋸歯がある幅広な葉をつけます。茎葉は3枚ですが、1枚が下に離れてつき残りの2枚が対生するという変わった葉の形態をしています。
大雪山以外では、ニセイカウシュッペ山や無意根山など見られる山は限られます。海外には分布しません。
高山の草地やハイマツの下などのやや湿った場所を好みます。
【オトギリソウ科】
ハイオトギリ (オトギリソウ科 オトギリソウ属)
Hypericum kamtschaticum (這弟切)
オトギリソウには多くの種類があります。しかし、大雪山の五色ヶ原で撮影したこのオトギリソウは長らく名前が判らないままでした。
というのも古い図鑑などでは、オトギリソウを見分けるポイントとして葉や花弁、萼にある黒点や明点の位置などを同定の決め手としていましたが非常に見分け難く、写真に撮っても見分けることは困難でした。ハイオトギリの可能性が高いとは思っていましたが、決定的な根拠が見つからず、長らくほったらかしていました。
今年新しく買った図鑑には、新たな見分けるポイントとして花柱と子房の長さの比較が記載されていました。
大雪山に分布するオトギリソウは、ダイセツヒナオトギリ、エゾヤマオトギリとハイオトギリの3種ですが、ダイセツヒナオトギリ(H. yojiroanum)は地熱地帯の湿地という極めて限定的な場所のみに生育し外観も違うので除外できます。
写真は縮小しているので雄蕊と重なって見難いのですが、原版で見ると花柱の方が子房とよりも長いことが判りましたのでハイオトギリだと思われます。
エゾヤマオトギリ(H. kurodakeanum)は子房の方が花柱より長いです。また、学名のように黒岳周辺でしか報告例がない稀産種のようです。同じ大雪山系でも黒岳と五色ヶ原は直線距離で15kmも離れているので、この写真のオトギリソウは、ハイオトギリで間違いなさそうです。ハイオトギリは国内では北海道の亜高山帯〜高山帯の草地や岩礫地の草地に分布します。海外ではカムチャッカ半島、サハリン、ロシア沿海地方に分布します。
オトギリソウの仲間の葉や花弁、萼にある黒点については伝説があり、シナノオトギリのところで紹介しています。
【フウロソウ科】
トカチフウロ (フウロソウ科 フウロソウ属)
Geranium erianthum f. pallescens (十勝風露)
チシマフウロ(Geranium erianthum)のうち大雪山に分布する花の色が薄いものをトカチフウロと言い、別品種として区別します。
この花は五色ヶ原のお花畑では以前は目立たない花でしたが、近年ではハクサンイチゲやチシマノキンバイソウが衰退しこの花が結構目立ちます。右は1982年に撮影したものですが、半八重のものです。
【タデ科】
ヒメイワタデ (タデ科 オンタデ属)
Aconogonon ajanense (姫岩蓼)
別名をチシマヒメイワタデと言います。国内では礼文島、利尻山、大雪山、夕張岳、戸蔦別岳、羊蹄山、南千島などの北海道の高山の砂礫地に分布します。国外ではサハリン、オホーツク、アムール、ウスリー、シベリア東部、朝鮮北部などの東北アジアにも分布します。
同じオンタデ属のオンタデが雌雄異株なのに対して雌雄同株の植物です。
オンタデに比べて葉は厚くて葉柄がない細長い披針形で、裏面脈上以外は無毛です。
地面に張り付くように生え、より寒い環境に適した姿をしています。
【ナデシコ科】
エゾタカネツメクサ (ナデシコ科 タカネツメクサ属)
Minuartia arctica var. arctica (蝦夷高嶺爪草)
北海道の夕張山地、日高山脈、大雪山系、知床山地、利尻島、礼文島の高山の砂礫帯に分布します。海外では北半球の高地や寒地に広く分布します。
本州に分布するタカネツメクサの基準変種です。
図鑑などには、『タカネツメクサよりも葉や花がやや大きく、種子の縁に細かい突起がある。』などと書かれています。しかし、この程度の差は標本などにして比べないと違いは分かりません。私の場合は、大雪山で撮ったから間違いなかろうという根拠です。
礼文島のものはレブンタカネツメクサ(ver. rebunensis)という変種とされていましたが、現在では同一種とされます。
【サクラソウ科】
エゾコザクラ (サクラソウ科 サクラソウ属)
Primura cuneifolia var. cuneifolia (蝦夷小桜)
本州の高山に見られるハクサンコザクラなどの基準変種で、国内では北海道(利尻山、知床半島、斜里岳、中央高地、鉢盛山、日高山脈、千島など)に分布します。海外ではアラスカ、アリューシャン列島、オホーツク沿岸、サハリンなどの北太平洋に広く分布します。
大雪山では大群落を見ることが出来ます。
左の写真のように雪田の跡や雪渓の縁といったところに大群落を作ります。
サクラソウの仲間には、本種のように根生葉が内側に巻くもの(ハクサンコザクラ亜属)とユキワリソウのように根生葉が外に巻くもの(ユキワリソウ亜属)とがあり、重要な見分けるポイントとなっています。ハクサンコザクラ亜属のサクラソウには、ハクサンコザクラやヒナザクラがあります。
【イワウメ科】
イワウメ (イワウメ科 イワウメ属)
Diapensia lapponica subsp. obovata (岩梅)
本州中部以北から北海道の高山にかけて分布します。海外では、サハリン、カムチャッカ半島、アラスカなど北半球の寒地に広く分布します。
本州中部以北の高山では普通に見られますが、大株となるとやはり大雪山で固体数も多いです。
又、大雪山では花が赤みを帯びるベニバナイワウメも見られます。
細かく分枝して小さな葉をびっしりとつけるので、緑のカーペットで岩壁や礫地を覆ったようになります。このカーペットの上に葉に比べて不釣り合いに大きな5弁花をたくさんつけます。この花の形がウメに似ていることからこの名前があります。
【ツツジ科】
ガンコウラン (ツツジ科 ガンコウラン属)
Empetrum nigrum var. japonicum (岩高蘭)
本州の中部以北と北海道の亜高山帯から高山帯のハイマツ林の林縁などに分布します。海外ではサハリン、ウスリー、シベリア東部、カムチャッカ半島などにも分布します。
ガンコウラン属は小さな属で、世界でも3〜18種しかありません。日本には本種のみが分布します。
ツガザクラに似た葉はツツジ科の植物を想起させますが、雌雄異株の植物でツツジの仲間とは思えないような大変地味な花を咲かせます。花期が6月と早いのでなかなか見ることは出来ません。
漢字は岩高蘭ですが、ランとは全く違った地味な花ですから、どうして『蘭』の名前がつくのかは判っていないそうです。
秋になるとご覧のように沢山の実をつけます。北欧などに分布するガンコウラン属の実はクロウベリーと言われジャムなどにして食べるそうです。
かつてガンコウランはツツジ科から独立してガンコウラン科を形成していましたが、APG分類では再びツツジ科に戻りました。
ミネズオウ (ツツジ科 ミネズオウ属)
Loiseleuria procumbens (峰蘇芳)
北海道と本州中部以北の高山帯の岩礫帯や岩壁に分布します。北半球の寒冷地方に広く分布する周北極要素を持つ植物です。
ミネズオウ属は本種ただ1種のみの属です。
米粒のような小さな硬い葉と星形の花をびっしりとつけて、岩の割れ目や礫地にマット状に広がっています。まるで小さな星を撒き散らしたようです。
地面や岩にへばりついていますが、これでも常緑の低木です。
左は大雪山で撮影した花の紅色が濃い品種でベニバナミネズオウ(f. rubra)と言い、葉も赤みを帯びています。右の写真は八ヶ岳で撮影したもので、本州の山では白花が普通です。
分布域の高山ならば、多くの場所で見られますが、大株となると大雪山が一番です。
夏も終わりになると、先の尖った赤い実をつけます。
アオノツガザクラ (ツツジ科 ツガザクラ属)
Phyllodoce aleutica (青の栂桜)
北海道や本州中部以北に分布します。海外ではサハリン、シベリア、カムシャッカ半島、アリューシャン列島、アラスカに分布します。
本種は近縁種のエゾノツガザクラと交雑し易く、両者が分布する大雪山では純粋のものはなかなか見つかりません。
その為、掲載している写真は、南アルプスで撮影したものです。高山帯の湿った草地や岩礫地を好み、雪田周辺に大君楽を作ります。
花冠は底が広い壺形で、花色は淡緑黄色です。花柄や萼も同様な色です。
右下の円内の写真は大雪山で撮ったものですが、萼が紅紫色を帯びており、エゾノツガザクラが少し入っているようです。
エゾノツガザクラが分布しない中部山岳では純粋なアオノツガザクラが見られるのかというと、これも難しく、こちらではツガザクラ(P. nipponica subsp. nipponica)との交雑種のオオツガザクラ(P. × alpina)が見られます。
この交雑種を私は見たことがありませんが、図鑑などで見るとツガザクラの萼がやはり赤いので、交雑種の萼も紅紫色を帯びるようです。萼の色から判断すると写真のアオノツガザクラは純粋に近いものと思われます。
エゾノツガザクラ (ツツジ科 ツガザクラ属)
Phyllodoce caerulea var. caerulea (蝦夷の栂桜)
北海道並びに本州(岩木山、早池峰山、月山)に分布します。海外では北半球の寒帯に広く分布します。湿地を好み雪田跡などにカーペット状の群落を作ります。大雪山では、あちらこちらに大群落を見かけることができます。花冠に腺毛があり、細長い壺型で紅紫色の花をつけるのが特徴です。又、花柄や萼も紅紫色です。
稀に白花があり、シロバナエゾノツガザクラ(f. albiflora)といいます。(写真左上)
エゾノツガザクラは近縁種のアオノツガザクラと交雑し易く、両者が分布する大雪山では様々な雑種が見られます。
写真のものも若干アオノツガザクラが入っているようで、花冠は若干丸みを帯びています。
羊蹄山などアオノツガザクラが分布していない山でないと、純粋なエゾノツガザクラを見るのは難しいようです。写真の左下に典型的と思われるエゾノツガザクラを載せておきましたが、大雪山で撮影したものなので純血種かは疑問です。
葉の形が針葉樹のツガに似ていることから、この名前があります。
コエゾツガザクラ (ツツジ科 ツガザクラ属)
Phyllodoce caerulea var. yezoensis (小蝦夷栂桜)
エゾノツガザクラとアオノツガザクラの自然雑種といわれるコエゾツガザクラです。両親には名前に「ノ」があるのですが、子には「ノ」が無いのはどうしてなのでしょうか。
エゾノツガザクラとアオノツガザクラが分布する大雪山では様々な段階の雑種が見られますが、花冠が丸みを帯び、色もピンク色で殆ど無毛のものをコエゾツガザクラと言います。
壺形の花冠が更に押し潰された形のユウパリツガザクラや、花色がしぼり模様のニシキツガザクラなどと命名された交雑種もあります。
イソツツジ (ツツジ科 ツツジ属)
Rhododendron diversipilosum (磯躑躅)
今まで誤ってヒメイソツツジをイソツツジとして紹介していました。これがイソツツジです。
浜辺ではなく、高山に咲く花なのに何故『磯躑躅』なんでしょうかね。
色々調べてみましたが、良く判りません。
因みにウィキペディアには、『和名は「エゾ(蝦夷)ツツジ」が誤って、または転訛して「イソツツジ」と伝えられた』という記載があります。しかし、この説だとするとエゾツツジという植物が別に存在するので矛盾するような気がします。
以前の学名(Ledum palustre subsp. diversipilosum)の種小名palustreは、「湿地に生える」という意味だそうですから、沼の岸にでも咲いていたのを名付けられたのでしょうか。
東北地方から北海道や千島の亜高山帯や高山帯に分布する常緑低木です。海外ではサハリンなどにも分布します。大雪山ではどこでも良く見かけます。ハイマツ帯の縁を飾るように群落を作ります。清楚な姿が印象的な花です。
葉の細いものを次項で説明するヒメイソツツジといい国内では大雪山のみに分布します。
以前はイソツツジ属だったのですが、APG分類ではイソツツジ属はツツジ属に吸収されました。
ヒメイソツツジ (ツツジ科 ツツジ属)
Rhododendron subarcticum (姫磯躑躅)
この写真を以前は誤ってイソツツジと紹介していましたが、正しくはヒメイソツツジです。両者は良く似ていますが、イソツツジよりも葉が小さくて細いのが特徴です。
イソツツジと違って国内では大雪山にのみ分布します。海外では朝鮮、シベリア、カムチャッカ半島、北米などに分布します。
以前はイソツツジ属だったのですが、APG分類ではイソツツジ属はツツジ属に吸収されました。
シラタマノキ (ツツジ科 シラタマノキ属)
Gaultheria pyroloides (白玉の木)
別名をシロモノと言います。北海道と本州中部以北と大山と三瓶山の亜高山帯や高山帯の林縁に生える常緑低木です。海外では、サハリン、アリューシャン列島に分布します。ンツツジ科で釣鐘型の花をつける仲間の中では地味な花なので、同時期に咲くエゾノツガザクラなどに気を取られて本種に気付くことは少ないようです。しかし、秋になると常緑の葉の中に見事な白い実をつけ、ようやく目立った姿になります。
日本にはシラタマノキ属はアカモノなど3種が分布します。
この仲間の実はサリチル酸メチルを含有しますので、実を潰すとサロメチール®の臭いがするそうです。もちろん高山植物ですから私は実を採ったことはありません。
ジムカデ (ツツジ科 ジムカデ属)
Harrimanella stelleriana (地百足)
北海道と本州中部以北の高山帯の礫地や岩隙に生える常緑低木です。海外では、カムチャッカ半島、アラスカなどの北アメリカに分布します。
大所帯のツツジ科の中でもジムカデ亜科ジムカデ属に属しますが、ジムカデ亜科はジムカデ属のみです。また、ジムカデ属は世界でも北半球の高山や寒帯に2種が分布するだけで、国内では本種のみです。
釣鐘状の可愛い花をたくさんつけるのに、地百足とはなんとも可愛らしくない名前をつけられたものです。
小さな扁平な葉をびっしりつけた茎の姿は確かにムカデに良く似ているのですが、ちょっとかわいそうな気がします。赤い萼と白い釣鐘状の花弁の組み合わせが印象的な花です。
イワヒゲ (ツツジ科 イワヒゲ属)
Cassiope lycopodioides (岩髭)
北海道と本州中部以北の高山帯の礫地や岩隙に生える常緑低木です。海外では、カムチャッカ半島やアラスカに分布します。
大所帯のツツジ科の中でもイワヒゲ亜科イワヒゲ属に属しますが、イワヒゲ亜科はイワヒゲ属のみです。また、イワヒゲ属には北半球の高山や寒帯に12種が分布しますが、国内では本種のみです。
鱗状の葉を密生し、ヒノキの枝のようです。
この枝の形に由来するのでしょうが、前種と同様に岩髭とは、なんとも可愛らしくない名前をつけられたものです。
写真のものは小さな株ですが、大雪山では岩場が白くなるほどの大株もあります。
前種と同じ様な釣鐘状の花ですが、前種は花冠の先が中裂して縁が曲線を描くのに対してこちらは、浅裂し三角に尖っているなど、微妙に異なっています。
花冠が短くて丸いタイプをマルバナイワヒゲ(f. globularis)として別品種とする見解もありますが、私は見掛けたことがありません。
【リンドウ科】
ミヤマリンドウ (リンドウ科 リンドウ属)
Gentiana nipponica var. nipponica (深山竜胆)
北海道と本州中部以北の高山帯の雪田跡などの湿った草原を好み、高山草原の代表的な花のひとつです。海外には分布しません。
ミヤマリンドウは本州の山でも良く見掛けますが、大雪山で見掛けたものは色が濃く大株のものが多かったです。
花冠は5裂し、裂片と裂片の間に副裂片があります。ミヤマリンドウでは、この副裂片は開化時に裂片と一緒に平開します。
ところが、近縁のリシリリンドウでは、副裂片は内側を向いて花筒を塞ぐような形になります。
【ムラサキ科】
エゾルリソウ (ムラサキ科 ハマベンケイソウ属)
Mertensia pterocarpa var. yezoensis (蝦夷瑠璃草)
北海道の夕張山地、日高山脈、中央高地の高山の岩壁や岩礫地に分布します。千島には基準変種のチシマルリソウ(ver. pterocarpa)が分布します。海外には分布しません。
花の形に特徴があり、花冠は筒形で中央に浅いくびれががあって、先は浅く5裂しますが平開しません。
日本に分布するハマベンケイソウ属の植物は、本種と海岸付近に分布するハマベンケイソウ(M. maritima subsp. asiatica)の2種だけで、両者は非常に良く似ています。
【オオバコ科】
ホソバウルップソウ (オオバコ科 ウルップソウ属)
Lagotis yesoensis (細葉得撫草)
大雪山の固有種です。
ずいぶん広い葉っぱですよネ。どこが細いのかと言われましてもねエ。
相対比較の問題ですから。
普通のウルップソウと比べればのハナシです。
ウルップソウとの差は、株全体が大きい、おしべが長い、花穂も長いなどもっと明らかに違う点もあるのですが、つまらない名前を付けられたものです。
大雪山の固有種ですから、『ダイセツウルップソウ』くらいの名前は付けてもらいたかったような気がします。
理化学実験用のビーカー類を洗う時に使用するブラシのような花を沢山突き出し、威風堂々といった感じで大雪山の風に揺れていました。
尚、夕張岳には近縁のユウバリソウが特産します。
ウルップソウ属は、以前の分類ではゴマノハグサ科でしたが、その後ウルップソウ科になり、APG分類ではオオバコ科に含められました。
イワブクロ (オオバコ科 イワブクロ属)
Pennellianthus frutescens (岩袋)
北海道と東北地方の亜高山帯から高山帯の砂礫帯や岩場に分布します。海外ではサハリン、カムチャッカ半島、シベリア北部、アリューシャン列島に分布します。
高山の砂礫帯に大株を作ります。樽前山に多いことから、別名をタルマイソウといいます。
この花の紹介には『桐の花に似ている』と良く書かれます。
かつての新エングラー体系などではイワブクロとキリはゴマノハグサ科に属していましたので、似ていても不思議ではありません。
現在のAPG分類では、キリはキリ科として独立し、イワブクロ属はオオバコ科に含められました。
また、イワブクロ属は、かつては世界的には250種類くらい含まれる大所帯でしたが、APG分類ではイワブクロ属は本種1種のみの1属1種となり、その他はツリガネヤナギ属となりました。
エゾヒメクワガタ (オオバコ科 クワガタソウ属)
Veronica stelleri var. longistyla (蝦夷姫鍬形)
北海道(利尻島、大雪山系、夕張山系、日高山系、知床)に分布します。海外ではサハリン、朝鮮半島北部に分布します。高山の草原や砂礫帯に生育します。夕張岳でも見掛けたことがありますが、大雪山では写真のような大株を良く見掛けます。
左上円内の拡大写真を見ると、花柱が花冠や雄蕊に比べて長いことが判ります。これに対して基準変種であるチシマヒメクワガタ(var. stelleri)は、花柱が萼よりも短いのだそうです。
クワガタソウ属は、以前の分類ではゴマノハグサ科でしたが、APG分類ではオオバコ科に含められました。
【ハマウツボ科】
キバナシオガマ (ハマウツボ科 シオガマギク属)
Pedicularis oederi (黄花塩竈)
周北極要素を持つ植物でヨーロッパ、アジア、北アメリカの北半球の高山帯に分布します。
日本では大雪山のみに生育します。
シオガマの仲間でも大柄で、鮮やかな濃黄色の花は高山植物の中でも特異です。
私も最初にこの花を見た時の驚きは忘れられません。
花茎も非常に太くて他のシオガマとは異なります。一般にシオガマの葉は羽状に裂けて美しいのですが、キバナシオガマの葉は羽状とは言うもののシダ類のような感じです。
大雪山ならどこにでも咲いているというわけでもありません。咲いている場所では、かなりの数の個体を見ることが出来ますが、左のような大株にはめったにお目にかかれません。
シオガマギク属は、以前の分類ではゴマノハグサ科でしたが、APG分類ではハマウツボ科に移りました。
【キク科】
クモマタンポポ (キク科 タンポポ属)
Taraxacum yesoalpinum (雲間蒲公英)
別名をアシベツタンポポといいます。大雪山の他には別名の由来となった芦別岳などの高山帯に分布します。
この写真は1982年に忠別岳避難小屋付近で撮影したものです。
タンポポの見分け方は総苞の形状の違いと葉の形状です。当時は銀塩カメラですから現代のデジカメのように何枚も写真は撮れません。総苞が比較的小さくて総苞外片の先に小さな突起のようなものがあることは撮影時に確認してきましたのでクモマタンポポだと思っていました。家に帰って図鑑を見ると、総苞以外にも根生葉は羽状に浅〜中裂するとして、殆ど葉が裂けていない写真が掲載されていました。この為、クモマタンポポと断定出来ないでいました。
タンポポなんて何時でも撮れると思っていましたが、その後大雪山に行くことは何度かありましたが、同じ季節に同じようなルートを歩く機会はなく、再度タンポポを撮影する機会がないまま41年経ってしまいました。
今年新しい図鑑を買ったところタンポポの分類が大きく変わり、見分け方の記載も変わっていました。総苞外片の突起も『ないか、あっても小さい』に変わり、葉についての記載はなくなりました。しかもクモマタンポポとして添付されている写真の株の葉は、この写真と同程度に深裂していました。
そんなことから、このタンポポは41年振りにクモマタンポポと判断しました。
現在では、在来種で日本の高山や寒地に分布するタンポポは、クモマタンポポの他には、ミヤマタンポポ(中部山岳)、ユウバリタンポポ(夕張岳)、オオヒラタンポポ(大平山)、シコタンタンポポ(T. shikotanense;室蘭から根室の太平洋側沿岸と千島)だけになりました。
ミヤマオグルマ (キク科 オカオグルマ属)
Tephroseris kawakamii (深山小車)
北海道の高山(利尻山、ポロヌプリ山、斜里岳、大雪山系、夕張岳、暑寒別岳、徳瞬瞥岳、ホロホロ山、色丹島)に分布します。海外ではサハリンに分布します。
舌状花は黄色ですが、筒状花は黄色からオレンジ色までの個体差があります。
葉と茎は、くも毛と呼ばれる細かい毛で覆われています。
オカオグルマ属は、以前の分類ではキオン属でしたが、APG分類ではオカオグルマ属として独立しました。オカオグルマ属で高山性の近縁種には、中部山岳に分布するタカネコウリンカがあります。
エゾハハコヨモギ (キク科 ヨモギ属)
Artemisia furcate (蝦夷母子蓬)
日本では大雪山のみですが、中央アジアから北太平洋地域の高山帯に広く分布します。
茎と葉ともに白い毛が密生しています。
この花を撮影した時は天気が悪くて、ストロボを使用したので白く輝く姿がより強調されています。
有花茎と無花茎があり、無花茎は伸長しないで葉を叢生させます。
写真の右端が無花茎です。
南アルプスと中央アルプスには近縁種のハハコヨモギが分布します。
サマニヨモギ (キク科 ヨモギ属)
Artemisia arctica subsp. sachalinensis (様似蓬)
北海道(利尻山、礼文島、千島、知床半島、ポロヌプリ山、暑寒別岳、羊蹄山、夕張岳、大雪山系、日高山脈)と東北(早池峰山、八幡平)の限定された山に分布します。海外ではサハリン、カムチャッカ半島、ウスリー、オホーツク、東シベリア、アラスカにも分布します。
日高山脈に分布することから様似の名前がありますが、様似町に一番近いアポイ岳には何回か登っていますが見掛けたことはありません。
早池峰山での個体数は結構多いですが、地名を冠した花なので同じ北海道の大雪山で撮影したものを載せました。
写真の個体はサマニヨモギというよりシロサマニヨモギ(f. villosa)に近いものです。
茎と葉ともに白い毛がかなり生えています。
シロサマニヨモギは大雪山と利尻岳にのみ分布します。両者の分布が重なる大雪山では中間型も多く見られます。
ヨモギの仲間ですから見栄えのしない花です。写真の個体は咲き始めの株で花数が少ない代わりにかなり大きな花をつけています。
【スイカズラ科】
チシマキンレイカ (スイカズラ科 オミナエシ属)
Patrinia sibirica (千島金鈴花)
別名をタカネオミナエシとも言います。
国内では北海道の高山の砂礫帯に分布します。海外ではモンゴル、シベリア東部、サハリンなどにも分布します。
秋の七草でお馴染みのオミナエシの仲間では唯一の高山性のものです。
金鈴花の名前はマルバキンレイカなどのようにオミナエシの仲間には幾つか共通してつけられています。
花は古くなると白くなるので、黄色い固まりの中に白い斑点が散らばったようになります。
以前はオミナエシ科として独立していましたが、APG分類ではスイカズラ科に含まれました。
尚、当ページに掲載した写真の著作権は中村和人にあります。
無断転載しないで下さい。
トップページに戻る