八ヶ岳
主峰赤岳(2,899m)を中心に天狗岳、硫黄岳、横岳、権現岳といった主脈を縦走する八ヶ岳の山旅は、展望の良さでは最高です。 富士山、北アルプス、南アルプスの山々の豪快な姿を楽しむことが出来ます。
ここには、早池峰山のハヤチネウスユキソウといったような絶対的な固有種はありませんが、ヤツガタケキンポウゲなどの幾つかの固有種が見られます。 尾根筋に咲き乱れる高山植物も種類と数は豊富で、ツクモグサやウルップソウなど他の山ではなかなか見られない花も結構あります。

作品の追加、変更は随時行う予定ですので、ご了解下さい。
旧明野村(現北杜市)より見た八ヶ岳の稜線
最終更新日;2025年4月24日

【イワウメ科】 【オオバコ科】 【オトギリソウ科】 【キク科】 【キンコウカ科】 【キンポウゲ科】 【クサスギカズラ科】 【シュロソウ科】 【スイカズラ科】 【セリ科】 【タヌキモ科】 【ツツジ科】 【ナデシコ科】 【バラ科】 【ユキノシタ科】 【ユリ科】 【ラン科】 (ここの並びは、あいうえお順)

以下の並びは、APGVに準拠。 探したい花の名前がわかっている場合は、トップページの【花の検索】から探すと全ての山のページが対象になります。
【キンコウカ科】
ネバリノギラン (キンコウカ科 ソクシンラン属)
Aletris foliata  (粘り芒蘭)
 
北海道南西部と本州中部以北及び四国(一部)と九州(一部)に分布し、海外には分布しません。山地から亜高山帯の湿った草地に生育します。 至仏山で初めてこの花を見掛けた時は、葉が他の植物に隠れて全く見えませんでした。今回八ヶ岳で撮影した写真に更新しました。 とは言っても、この写真も見える葉の数が少なくて痛んでいるので葉の形状が良く判りません。
右側に至仏山で撮影した開花直前の株の写真を貼り付けました。披針形〜倒披針形の先が尖った根生葉を束生します。 また、花被片6枚は先端を残して合着しているので壺型の花となります。
ノギランに似ているので、この名前がありますがノギラン(Metanarthecium luteoviride ver. luteoviride)はノギラン属という別の属の植物です。花序や花被に腺毛が密生するので、花に触るとネバネバするのが名前の由来です。
ソクシンラン属は、以前はユリ科でしたがAPG分類ではキンコウカ科に変更となりました。

【シュロソウ科】
タカネシュロソウ (シュロソウ科 シュロソウ属)
Veratrum maackii ver. japonicum f. atropurpureum  (高嶺棕櫚草)
 
花の色が紫褐色なので別名をムラサキタカネアオヤギソウと言い、この名前で紹介している図鑑もあります。シュロソウ(ver. japonicum)の高山型ですから、タカネシュロソウの方が判りやすいです。 他にもタカネアオヤギソウ(ver. parviflorum f. alpinum)という名前の植物もあるので、ムラサキタカネアオヤギソウという名称だと混乱します。
本州の中部山岳以北の高山帯の草地に分布し、海外には分布しません。 シュロソウ属は、APG分類では従来のユリ科から独立して科を代表する名称になったので、紹介出来るような写真はないかと探してみましたが良い写真は見つかりませんでした。 以前は至仏山で撮影したまだ花茎が充分に伸びきっていない咲き始めの株を掲載していましたが、今回八ヶ岳で撮影した写真に更新しました。
図鑑などには高さが20〜40cmとありますが、稜線付近の環境の厳しい場所にも進出しており、10cm位でも立派な花を咲かせます。写真の株も硫黄岳山荘近くの稜線で見掛けた株です。 今までこの花を八ヶ岳で見掛けたことは無かったのですが、今回は硫黄岳から横岳の間の鞍部で何株も見掛けました。
棕櫚草の名前の由来は、茎の基部にシュロの繊維のようになった古い葉鞘が残ることからだそうです。

【ユリ科】
クルマユリ (ユリ科 ユリ属)
Lilium medeoloides var. medeoloides  (車百合)
 
北海道、本州(近畿以北)、四国(一部)の亜高山帯の草地に分布します。海外では、朝鮮半島、中国、サハリン、カムチャッカ半島に分布します。 高山の高茎草原などの湿性の場所に大群落を作ります。 昔は白馬鑓ヶ岳の大出原の大群落が有名で、高山植物の本やカレンダーなどに良く登場していました。 八ヶ岳では他の植物に混じって、ぽつん、ぽつんと咲いています。風が当たらない場所だと結構高い場所にも進出し、南アルプスでは稜線の風下側付近でも見られます。
茎の中程に数枚の葉を輪生させます。この葉の形を車輪に見立ててこの名前があります。

【ラン科】
タカネサギソウ (ラン科 ツレサギソウ属)
Platanthera mandarinorum subsp. maximowicziana ver. maximowicziana  (高嶺鷺草)
 
北海道の東部と渡島半島、東北地方、白馬岳、八ヶ岳、南アルプスの亜高山帯の湿った草地分布します。ハイマツの下など強風が避けられて湿った場所であれば稜線付近でも見掛けます。海外には分布しません。 ツレサギソウ属はランの仲間では黄緑色の目立たない花を咲かせます。唇弁が肉質で舌状になり裂けないことが属の特徴です。タカネサギソウは花の後ろに突き出た距が長いことが特徴です。
などと植物図鑑の受け売りみたいなことを書いてみましたが、自然に咲いている植物の場合、見映えの良い株にはなかなか出会えませんし、登山道からの撮影では角度や撮影位置が限られるので思ったような写真はなかなか撮れません。組み合わせ写真でなんとか特徴を出してみました。
平地の湿原に咲くサギソウ(Pecteilis radiata)の高山変種のような名前ですが、両者は全く関係ありません。

【クサスギカズラ科】
マイヅルソウ (クサスギカズラ科 マイヅルソウ属)
Maianthemum dilatatum  (舞鶴草)
 
北海道から九州の亜高山帯から高山帯で普通に見られます。海外では朝鮮半島、中国北東部、シベリア東部、サハリン、カムチャッカ半島、北アメリカと北半球に広く分布します。 根茎は良く分枝して広がるので、樹林帯の林床に大きな群落を形成しているのをしばしば見かけます。
中部山岳ですと、この花が咲いている付近は、長い樹林帯の最中で、先を急いであまり写真に納めたことはありません。 今回は宿泊地の赤岳鉱泉に予定より早く着いてしまい、のんびり付近を散策して、この写真を撮りました。 名前の由来は、ハート型をした葉の形を鶴が舞う姿にたとえています。
左下に花の拡大写真を表示していますが、ユリ科としては珍しく4枚の花弁を持ちます。この花弁は反り返り、4本のおしべが突き出しているので、花から棘が出ているように見えます。 又、右下に果実の写真も表示しました。写真は未熟な果実で、完全に熟すと真っ赤になります。
従来はユリ科でしたが、APG分類ではクサスギカズラ科に変わりました。 クサスギカズラ科の名前の由来はコバギボウシをご覧下さい。

【キンポウゲ科】
ツクモグサ (キンポウゲ科 オキナグサ属)
Pulsatilla nipponica  (九十九草)
 
春の山野草としてお馴染みのオキナグサ(P. cernua)の近縁種ですが、クリーム色の美しい花をつけます。キンポウゲ科の植物ですから花弁のように見えるのは萼片です。 見られる山は限定され、北海道ではポロヌプリ山、石狩山地、芦別岳と日高山地に、本州では八ヶ岳、雪倉岳と白馬岳に分布します。海外には分布しません。花期は6月上旬ですが年により変動します。 今回の撮影は花期には早かったというよりも撮影時間が早かったので、まだ充分に開花していませんでした。そこで開花したものと組み合わせてみました。
全草が長い毛で覆われています。左の写真はツクモグサとしては大株です。八ヶ岳を代表する花ですが、この花が咲いている山域は広い八ヶ岳でも限られています。
オキナグサと同様、花が咲き終わると長い羽毛状の実をつけます。
名前は、この花の発見者である城数馬氏の祖父の名前に由来します。さぞやお爺さんも翁を連想するような立派なヒゲをしていたのでしょうね。

【ユキノシタ科】
トリアシショウマ (ユキノシタ科 チダケサシ属)
Aatilbe thunbergii var. congesta  (鳥足升麻)
 
南千島、北海道及び中部地方以北の亜高山帯〜高山帯下部の林内や草地に分布します。海外には分布しません。 葉は3回3出の複葉で小葉は長さ5〜12cmで縁には不揃いの重鋸歯があります。 根出葉とは別に高さ40〜100 cmになる花茎を出し、花茎は分枝しないで数個の茎葉をつけ、その頂に大型の円錐花序を形成し、良く分枝して多数の白い花をつけます。 私はこの分枝した花の形が鳥の足に似ているのでこの名が付いたと思っていましたが、春に萌え出る若芽が鳥の足によく似た形をしていることが名前の由来だそうです。

【バラ科】
タカネバラ (バラ科 バラ属)
Rosa nipponensis  (高嶺薔薇)
 
高山植物にバラ科の植物はたくさんありますが、薔薇らしい花を咲かせるバラ属の植物は本種とオオタカネバラ(R. acicularis)だけです。
本州の中部山岳以北〜東北(宮城・山形)と四国(一部)の針葉樹林帯に分布します。海外には分布しません。 固有種のような珍しい花ではありませんが、私が登った山では季節が合わなかったのか咲いているのを見たことがありませんでした。 高山植物としては一般的な花なので、いつか撮影したいとは思っていました。昨年見たテレビ番組で八ヶ岳の西岳付近で咲いているタカネバラを見掛けましたので、今年花期に合わせて登り、ようやく逢うことが出来ました。 しかし、ただの赤い野バラですね。
小葉が3〜4対あり、小葉は楕円形〜倒長卵形で先が丸いのが特徴です。よく似た植物のオオタカネバラは、小葉が2〜3対で小葉は卵状長楕円形で先が尖るのが特徴です。

チョウノスケソウ (バラ科 チョウノスケソウ属)
Dryas octopetala var. asiatica  (長之助草)
 
本州の中部山岳以北と北海道の高山帯の砂礫地に分布します。海外では朝鮮半島北部、サハリンなどに分布します。 分布域のどこの山でも見られる訳ではなく、見られる山は限られます。ところが八ヶ岳では結構たくさん咲いています。
ロシアの植物学者マキシモヴィッチの元で日本の植物採取に協力した須川長之助氏に因んだ名前です。種の名前のoctopetalaは「8枚の花弁」という意味です。確かにキンポウゲ科を除くと野生の植物で8弁が標準的な花は少ないようです。 花後に花柱が長く伸びてチングルンマの実のようになります(右下の円内)ので、ミヤマチングルマという別名もあるようです。

【オトギリソウ科】
シナノオトギリ (オトギリソウ科 オトギリソウ属)
Hypericum senanense subsp. senanense  (信濃弟切)
 
日本に自生するオトギリソウの中では最も高い場所に分布するオトギリソウで、中部山岳の亜高山帯から高山帯のみに分布します。海外には分布しません。 オトギリソウは変異の多い植物で、この仲間は普通の山野でも良く見かけますし、公園などに植えられている外来園芸種のビヨウヤナギ(H. monogynum)も同じ仲間です。山地や高山帯にも多くの種類が分布しますので名前を特定するのには苦労をしますが、中部山岳ならばシナノオトギリかイワオトギリです。 オトギリソウを見分けるポイントは、葉や花弁、萼にある黒点や明点の位置です。シナノオトギリは全体に小柄で、茎は直立または斜上します。葉身の内側には多少の明点と葉の縁には黒点が纏まってあり、萼片の内側に黒点が多く黒線が混じるといった特徴があります。左下楕円内に葉の拡大写真を載せましたが、葉の縁に黒点が纏まってあることが判ります。また、ぼんやりですが葉には明点もあります。 これに対して、イワオトギリは葉全体に黒点が多いので区別出来ます。
オトギリソウは『弟切草』です。 花の名前は、この草から得られる秘伝の薬の秘密を漏らした弟を斬り捨てた時に飛び散った血痕がこの草の花や葉にかかり、黒いシミや黒点になったという鷹匠兄弟の伝説に由来しています。 物語の詳細は、ウキペディアなどをご覧下さい。

【ナデシコ科】
ミヤマミミナグサ (ナデシコ科 ミミナグサ属)
Cerastium shizopetalum var. schizopetalum  (深山耳菜草)
 
本州中部(南ア、中央ア、八ヶ岳)に分布します。海外には分布しません。 都会に蔓延る雑草のオランダミミナグサ(C. giomeratum)の仲間です。オランダミミナグサは帰化植物ですが、こちらは在来種です。 オランダミミナグサが雑草然とした花なのに対して、高山植物の本種は花も大きく、5弁の花弁は2裂し更に2裂するので20枚もあるように見えます。
中部山岳では良く見かける花ですが、写真を撮るとなるとなかなか絵になるような株が見つからない花のひとつです。北アルプス(白馬岳〜槍ヶ岳・穂高)には変種のクモマミミナグサ(var. bifidum)が分布します。

ミヤマツメクサ (ナデシコ科 タカネツメクサ属)
Minuartia macrocarpa var. jooi  (深山爪草)
 
北アルプス(白馬岳、槍ヶ岳)、南アルプス(赤石岳、荒川岳)、八ヶ岳の高山帯の砂礫地や岩場に分布し、海外には分布しません。 よく分岐してマット状に広がり大株になります。たくさんの白い花を一面に咲かせます。
近縁のタカネツメクサと非常に良く似ています。 この写真ではミヤマツメクサとタカネツメクサが混生しており、右側の少し影になっている場所と中央の岩の上部に一列ほど生育しているのがタカネツメクサで、残りがミヤマツメクサです。 両者の違いは葉の太さです。タカネツメクサは葉に1脈あるだけなので幅が約0.5〜0.8mmの細い葉ですが、ミヤマツメクサは葉に3脈あり幅も約1〜1.5mmとやや広いことが特徴です。 この写真からでも両者の葉の幅の差は分かるかと思います。

シコタンハコベ (ナデシコ科 ハコベ属)
Stellaria ruscifolia  (色丹繁縷)
 
北海道(千島、知床、根室、中央高地、羊蹄山)、本州中部(日光、浅間山、北ア、八ヶ岳、南ア)の高山の岩礫地や海岸の崖に分布します。海外ではサハリン、カムチャッカ半島、ロシア沿海地方に分布します。
高山性のハコベの仲間の葉は細いものが多いのですが、シコタンハコベは卵形の葉を対生します。 花弁の数は5枚ですが、深く2裂するので、10枚のように見えます。 白い花弁を背景に赤い雄蕊の葯が目立つのですが、この写真では葯が殆ど見えません。 咲き始めの花の隙間から見える葯は赤いので、花粉が雨にでも流されたのでしょうか。左上に雨に濡れたシコタンハコベの写真を組み込みましたが、多少雨に打たれたくらいでは簡単には流されないようなので、虫にでも運ばれたのでしょうか。

【イワウメ科】
コイワカガミ (イワウメ科 イワカガミ属)
Schizocodon soldanelloides ver. soldanelloides f. alpinus  (小岩鏡)
 
イワカガミ(Schizocodon soldanelloides ver. soldanelloides)は、低山から高山まで広く分布しています。また、九州から北海道まで水平方向の分布も広いです。海外には分布しません。 低山のものは全体的に大型のことからオオイワカガミ(var. magnus)、高山に分布する小型のものをコイワカガミ(f. alpinus)と区別されます。 但し、現在のDNAによる解析では差異が認められずイワカガミと区別しないという考え方もあるそうです。
岩場に生えて葉に光沢があることから「鏡」に見立てた名前です。
赤岳山頂から文三郎登山道に入ったところで、芽を出したばかりのこの花を見つけました。高度を下げて行くにつれて成長状態が進み、行者小屋を過ぎたあたりで見事な花期の群落に出くわしました。今回の山旅はこの花の垂直分布を知る旅にもなりました。

【ツツジ科】
キバナシャクナゲ (ツツジ科 ツツジ属)
Rhododendron aureum  (黄花石楠花)
 
北海道〜本州(中部以北)の高山帯の風衝地やハイマツ林の林縁などに分布します。海外ではサハリン、朝鮮半島北部、カムチャッカ半島、東シベリアに分布します。
日本で見られるシャクナゲの仲間では最も高いところに上がった種類です。1つの花も大きいですが、房状に3〜10花がまとまって咲きますので、見応えがあります。高山帯の尾根筋などで見かける花の大きさで1位の花です。

ハクサンシャクナゲ (ツツジ科 ツツジ属)
Rhododendron brachycarpum  (白山石楠花)
 
南千島、北海道、中部地方以北及び石鎚山の亜高山帯〜高山帯の針葉樹林中に生える常緑低木です。海外では朝鮮半島北部に分布します。 花色は白が多いですが、写真の株のようにほのかにピンク色を帯びる場合もあります。 日本の高山帯に分布するシャクナゲは本種とキバナシャクナゲの2種です。写真のようにハイマツに混じって咲いていることもありますが、本種の方がキバナシャクナゲより低い場所に分布します。 種小名のbrachycarpumは「短い果実」という意味だそうで、写真中央付近に未熟な短い刮ハも写っています。
中部山岳ですとアズマシャクナゲ(R. degronianum ver. degronianum)も亜高山帯には進出しています。アズマシャクナゲは花期であれば蕾は鮮やかな赤色で花は淡いピンク色ですから区別は簡単です。 また、ハクサンシャクナゲは葉の基部が円形か浅い心形であるのに対してアズマシャクナゲは葉の基部はくさび形ですので葉でも区別が出来ます。

コメバツガザクラ (ツツジ科 コメバツガザクラ属)
Arcterica nana  (米葉栂桜)
 
ツガザクラの名前がありますが、ツガザクラ属ではなく、コメバツガザクラ属として独立しています。コメバツガザクラ属は、世界でも本種1種のみの1属1種の植物です。 北海道や本州中部以北及び大山、氷ノ山の亜高山帯や高山帯の砂礫帯や岩場に分布します。海外ではカムチャッカ半島にも分布します。 花はアオノツガザクラに似ていますが、葉はツガザクラの仲間とは思えないような丸い葉で、チグハグな名前を付けられたものです。
円内の花の写真は大雪山で撮影したものですが、北海道のものは萼が赤いのが特徴です。この写真の花弁は白ですが、なかには花弁まで赤みを帯びるものもあるようです。

【オオバコ科】
ウルップソウ (オオバコ科 ウルップソウ属)
Lagotis glauca  (得撫草)
 
国内では八ヶ岳、白馬岳、礼文島、千島に分布しますが、礼文島ではまず見る事はできません。八ヶ岳も以前は結構咲いていたのですが、最近では激減してしまいました。名前は千島列島のウルップ島(得撫島)に由来します。海外ではカムチャッカ半島、オホーツク、アリューシャン列島、アラスカに分布します。
この花も花期には恵まれず、今回4回目の差し替えとなりましたが、良い写真が載せられません。
硫黄小屋の周辺にはウルップソウの群落があるのですが、花期にもかかわらず花が咲いていたのは3株だけでした。1株だけ形の良い株があったのですが、立ち入り禁止区域の中で20mも距離があったのでズームレンズの望遠側で撮影し、ピクセル等倍にして、ようやくこの程度の大きさです。登山道に近い場所で咲いていた株も右下に組み込みました。 太くて青い花穂をつけますが、右下のように咲き終わった花の残骸が汚く残る性質があります。 大雪山のものは、葉がやや細くホソバウルップソウと言います。 夕張岳にはユウバリソウが特産します。
ウルップソウ属は、以前の分類ではゴマノハグサ科でしたが、その後ウルップソウ科になり、APG分類ではオオバコ科に含められました。

【キク科】
タカネニガナ (キク科 ニガナ属)
Ixeridium alpicola  (高嶺苦菜)
 
本州、四国(石鎚山)、九州(屋久島)の高山の岩場に分布します。海外には分布しません。 タカネニガナは、かつては全国各地の野山で普通に見られるニガナ(I. dentata subsp. dentata)の高山亜種とされていましたが、現在の分類では独立種として扱われます。
平地のニガナは背丈の高い草で地味な花をつけます。 高山に分布するタカネニガナは矮小化し、葉も小さくなっているのに、花は逆に大型になり花弁の数も増えています。 高山を訪れる数少ない昆虫にアピールする為には、地味な姿では生きて行けないのです。

【セリ科】
シラネニンジン (セリ科 シラネニンジン属)
Tilingia ajanensis  (白根人参)
 
北海道と本州中部以北の亜高山帯〜高山帯の日当たりの良い草地、岩礫地、砂礫地などに分布します。海外ではシベリア東部やロシア極東地方、中国、朝鮮に広く分布します。 葉は根出葉が中心で、2〜3回羽状複葉で小葉はさらに細かく裂けます。パセリのような形状の葉です。草地では草丈40〜60cmにもなりますが、風衝草原や稜線付近では草丈10cm程度でも花を咲かせます。 写真の株も稜線付近で撮影したものです。日光白根山で最初に発見されたことからこの名前があります。
ヒグマの好物として有名ですが、ツキノワグマだって好きな筈です。本州の山でもこの花が群生している場所に差し掛かったら足早に通り過ぎた方が良さそうです。

【スイカズラ科】
リンネソウ (スイカズラ科 リンネソウ属)
Linnaea borealis  (リンネ草)
 
本州(中部以北)と北海道の亜高山帯〜高山帯の樹林帯の林縁に分布します。海外では北半球の寒帯や高山に広く分布しますが、リンネソウ属は1属1種の植物です。 淡いピンク色の可憐な花を下向きに咲かせます。草ではなく矮性低木です。他の植物と混生することが多く葉が隠れて見えないので、右側に葉が写った株を貼り付けました。
属名のLinnaeaは、スウェーデンの植物学者のリンネ(Carl von Linné)への献名です。和名もそのままです。
花茎の先は2つに枝分かれして、一対の花をつけることから「夫婦花」の別名があります。

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