2009年

 この年は尾瀬と太平山に登りました。尾瀬は昨年のトガクシショウマへの再挑戦です。大平山の方は昨年の崖山で見ることが出来なかったオオヒラウスユキソウに会いに行く為です。
 6月頃から母が入退院を繰り返しておりました。容態が安定していたので大平山に向かったのですが、麓の村に着いた途端に容態が悪化したとの連絡が入り、大平山は途中まで登って引き返し、急いで帰京しました。 母の容態は、一端は回復したのですが、その1週間後に息を引き取りました。そんな訳でこの年は他の山には登れずじまいでした。
大平山 (2009年7月24日)

 昨年は崕山のモニター登山に当選したおかげで念願の崕山に登ることは出来たのですが、植生保護の為に沢沿いのコースだったので、殆ど花は見ることが出来ませんでした。オオヒラウスユキソウは名前の由来となった大平山と崕山にのみ分布します。そこでこの年は大平山に登ることとしました。余談ですが、大平山の正しい呼び方は「おびらやま」です。アイヌ語で『川奥の崖』を意味するオピラシュマが語源のようです。花の名前のオオヒラウスユキソウは学者が勘違いして名付けたのかもしれません。 正直なところ、自然保護を考えれば崕山や大平山が有名になって多くの登山客が押し寄せるようになって欲しくありません。崕山は入山規制がしっかりしていますが、大平山は充分とは言えません。そんな訳でルート等の詳細は避けて記述することとします。
 朝に家を出て、飛行機、列車、路線バスを乗り継いで大平山の麓の村の宿に着いたのは夕方でした。大平山の登山用の地図はありません。そこで国土地理院のWebサイトの地図を調べてみると、どうやら尾根伝いに幾つかのピークを越えて登るようです。他にお客もいないので夜になってから宿の主人に大平山の登山ルートなどを伺いました。 又、直前になって入院中の母の容態が良くないということなので、山頂までは行かずにオオヒラウスユキソウだけ見て帰ることにしました。
 当初は、宿の主人は登山口まで車で送ってくれるという約束だったのですが、地元のボランティア団体の高山植物監視員もされており、第二ピークまで高山植物等の調査に登るということで、同行して戴けることになりました。川に沿って走る立派な林道の終点が大平山の登山口です。この林道は将来更に延長されるのだそうですが、ここまでの僅か5kmに20年の歳月と100億円ものお金を注ぎ込んで工事が中止されています。残りの区間の工事にはまだ1000億円もかかるのだそうです。終点付近が未舗装の他は立派過ぎる道路で、これでは盗掘者への奉仕道路になってしまいます。
 昨日までの雨は上がり、雲は多いものの先ずは登山日和です。登り始めはイラクサの茂る沢登りです。風通しの悪い沢で案の定ブユなどの吸血性昆虫の洗礼を受けましたが、スキンガードをスプレーしてきたおかげで血を吸われないで済みました。沢にはカドバリヒメマイマイというここにしか生息しない珍しいカタツムリが沢山います。このカタツムリは殻が扁平というか、スパッと削り取ったような不思議な形をした殻を背負っています。沢を抜けると暫くブナの樹林帯を登ります。樹林帯を抜けると尾根筋に出ます。この尾根筋の道は溜息が出るほど険しいです。普通の登山道は多少ジグザクしながら高度を上げるのですが、ここは尾根に沿って真っ直ぐで急な道が付いているだけです。しかも雨あがりで登山道は滑り易いです。 標高810mの第一ピークに着いた時にはかなりへばりました。標高1109mの第二ピークに近づくと地層が変わり、今までの黒っぽい岩から石灰岩の白い岩に変わりました。この石灰岩の岩場に目指すオオヒラウスユキソウが生えているのを見つけました。この年は天候不順で色々な花の開花が遅れているとのことで、殆どのオオヒラウスユキソウが蕾の状態です。その中で数株の開花直後の株を見つけました。咲き始めの株だと母種のハヤチネウスユキソウとの違いが良く判りません。近くにはテガタチドリやフタマタタンポポなども咲いており、ここで今回の山旅の目的は充分達成できそうです。オオヒラタンポポもありましたが、花期は完全に終わっていました。宿の主人は第二ピークの先まで視察に行くということなので、ここで花を撮りながら宿の主人が戻るのを待ちます。暫くして戻って来られたので一緒に下山を始めましたが、急斜面に何度も足を滑らせながら高度を落として行きます。途中でカラフトマンテマを見掛けました。第一ピークまで下ると、もう完全に曇ってしまい周囲の展望は望めません。登りの無理が祟ったのか樹林帯に入ると足がふらつきだしました。足を庇いながらゆっくり下山しましたが、疲れて水ばかり飲みました。特に沢に入ってからは、少し歩いては休みを繰返す状態でやっとの思いで下山しました。今日は下山の途中で2名の登山者と出会っただけでした。
 下山して万歩計を見ると、標高差約1000mを僅か1万歩で上り下りしてしまいました。いかに急勾配の登山だったかと思いました。大平山には、しっかりした登山道はありますが険しい山でした。登山道の整備はあまりしないとのことなので、一般人があまり登らないことが自然保護に役立っているのかもしれません。そのせいかセイヨウタンポポなどの外来種の侵略は殆ど無いようでした。有名になって、お馬鹿な団体ツアー登山者が大挙押し寄せることが無いよう祈るばかりです。 本来ならば大平山のページを作るところですが、同じ花が見られる夕張山系などの他の山のページで紹介することにしました。
尾瀬 (2009年5月23日)

 昨年、念願のトガクシショウマを見ることは出来たのですが花弁の先が枯れはじめていました。この年は再挑戦ということで、昨年よりも1週間早く出かけることにしました。新宿西口発の尾瀬行夜行バスは、今日(22日)がこの年の運行開始日です。乗客は26名で50%程度の乗車率です。殆どの客は隣が空席なので二人掛けの座席に一人で寝転がっているのですが、私の予約席は生憎の相席です。幸いにも通路側の席だったのでなんとか通路に足が伸ばせることが出来ました。このバスは大清水行きで時刻表では戸倉、大清水の順に停車なのですが、実際には戸倉には止まらずに最初に大清水に行ってから戸倉に戻ります。このほうが鳩待峠行きの連絡バスを待つ時間が短くて済む上に連絡バスの事務所が開くまでの間、バスの車内で過ごすことが出来て親切な対応です。
 雨が上がった後で少し小雨がパラつく中、鳩待峠を出発です。今回は目的地が判っているので、かなり早いペースで歩きます。昨年よりも1週間早いのですが、この年は雪解けが早いようでミズバショウがあちこちで咲き始めており、この年も無駄足かと心配になりました。曇りだった天気も途中から霧が重くなり霧雨になりました。たいした降りではないのですが止みそうにないので、合羽を着ます。トガクシショウマの咲く沢に向かう小道に入ると木道は残雪に埋もれており、昨年よりも残雪が多そうなので少しホッとしました。トガクショウマの咲く小さな沢に差し掛かった頃に雨はあがりました。花は丁度見頃なのですが、昨年よりも株数が少ない上に咲いている株の花数も少ないです。咲いている場所も去年と同じで、上の方の株は足場が悪くて撮影が出来ません。同じ株を何度も角度を変えて撮りました。40枚ほど撮って撮影終了です。雨はすっかりあがって薄日も差してきました。僅かの時間だけ降った憎たらしい雨です。
 鳩待峠に戻ると、暫くは連絡バスがないと言われたので缶ビールを買い、口を開けた途端に臨時便が出るというのでムセながら急いで飲み干しました。路線バスで上毛高原駅に行き、新幹線でモバイル特急券を使って帰りました。

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