2008年

 この年は尾瀬にトガクシショウマを見に行きました。絶対に当たらないと思っていた崕山のモニター登山に当選し、トチナイソウを見ることが出来ました。
又、26年ぶりに大雪山の五色ヶ原にも行き、悲しい思いもしました。
大雪山 (2008年7月25日〜7月26日)

 ここ数年、大雪山には行ってはいますがロープウェイがある所ばかりです。五色ヶ原でハクサンイチゲの海に浮かぶトムラウシ山を見たのは、もう26年も前です。近年は五色ヶ原の高山植物の群落が減ってしまったという話を聞き、心配になりました。26年前は、黒岳から白雲岳、平ヶ岳、忠別岳を経て行ったのですが、年をとって体力的にきついので、クチャンベツ沼ノ原登山口から登ることにしました。
 前日は層雲峡に宿泊です。夏の観光シーズンだというのに層雲峡は静まりかえっており、宿泊した宿もガラガラでした。前日予約しておいたタクシーは約束の時間通りに来ました。タクシーの運転手によれば、この年は洞爺湖サミットと北京五輪の影響で北海道は極端に観光客が少ないのだそうです。クチャンベツ沼ノ原登山口までは1時間ということでしたが、僅か35分で到着しました。駐車場は車が一杯で、マイクロバスも停まっています。15名位のボランティア団体が登るようで、この後に続いて登り始めました。熊を心配していたのですが、これだけの人数がいるので一安心です。新しく買ったクマ避けの鈴も良く鳴ります。登り始めると直ぐに二箇所で川を渡るのですが、ちょっと怖い丸木橋です。ボランティアの方々とは、いつの間にか離れてしまいました。昭文社の地図には沼ノ原分岐まで2時間30分とあるのですが、1時間15分で着きました。雲を冠ったトムラウシ山が見えます。沼ノ原の木道はかなり痛んでいます。木道の切れ目は泥濘でズボンの裾は泥だらけです。五色の水場を過ぎると少し急な登りがあるのですが、この辺からヨツバシオガマやミヤマリンドウが登場し高山の雰囲気です。トカチフウロとミヤマリンドウが目立つのですが、エゾコザクラは少ないです。五色ヶ原に入る頃にはトムラウシ山は雲に隠れてしまいました。五色岳が近づくと再び木道が現れましたが、木道の切れ目はぬかるんでいます。笹原が続き高山植物の群落を見掛けません。トムラウシ山が雲の合間に現れたり消えたりしました。やがて26年前に訪れた場所にさしかかりましたが高山植物の群落は全く無く、草原が広がっているだけで、その中にトカチフウロがぽつんぽつんと咲いているだけです。26年前のあのハクサンイチゲの大群落はどうなってしまったのでしょうか。今回は群落どころかハクサンイチゲは1株も見掛けません。激変の様子は、ここをクリックしてください。 あの時はハクサンイチゲ以外にもエゾコザクラやコエゾツガザクラの大群落もあったのですが全く見掛けません。チシマノキンバイソウが小さい群落を作っている程度です。群落どころか、花の数自体が少なくなっていました。花期がずれたというのならば、枯れ花や蕾の群落がある筈ですが、それらも全くありません。泥濘はあるのですが昔に比べて笹原が多いので、五色ヶ原全体が乾燥化しているのかもしれません。マイクロバスで来たらしい団体客を途中で追い越しました。4時間15分で五色岳山頂に到着しました。コンビニで買ったおにぎりの昼食を済ませると中年女性グループが到着しました。彼女達は、ヒサゴ沼からトムラウシ山を目指すようです。五色岳の標識をバックに記念撮影を済ませました。
 帰りは急速に雲行きが怪しくなってきました。急にガスったかと思うと晴れ間が出るなど不安定な天気になりました。沼ノ原分岐まで下ったら、お天気雨(キツネの嫁入り)が降り出しましたが直ぐに止みました。一緒に登ったボランティアの方々は沼ノ原の木道修復に従事しており、木道を新たに付け替える作業中でした。後は下るだけと思っていたら、途中から雨になりました。あと少しで登山口なので合羽を着るのを躊躇いましたが、激しく降り出したので合羽を着ました。ボランティアの方々は雨具を用意していなかったのか、ずぶ濡れになって駆け足で追い越して行きます。クチャンベツ沼ノ原登山口に着いたら雨は上がりました。登山口の無人小屋で合羽を畳み一休みして、迎えのタクシーを待ちました。
 翌日は宿に荷物を預けて、午前中は銀泉台から赤岳に登ってこようかと思っていたのですが、宿で荷物を預からないというので、旭川に戻り姿見に行くことにしました。 旭川でバスを乗り継ぎ、旭岳温泉からロープウェイで姿見まで登りました。晴れてはいるのですが旭岳は雲に隠れたままです。この年は花暦が二週間ほど早い感じです。チングルマはほとんどが実になっているし、エゾノツガザクラも花は完全に終わって一部は実をつけています。花はミヤマリンドウとミヤマアキノキリンソウが盛りです。トンボが沢山飛んでいて、もう秋の風情でした。
崕山 (2008年6月15日)

 私が崕山を意識したのは、今から10年位前です。皮肉なことに全面的に登山禁止になるという報道でした。それまでもオオヒラウスユキソウやキリギシソウなどの貴重な植物が咲く山ということは知っていましたが、標高が低いことから定年過ぎてからのお楽しみと思っていました。 林道が整備され、簡単に登れるようになったことから盗掘者が増え、貴重な植物がすさまじい盗掘の被害に遭い絶滅の危機に瀕していることから全面登山禁止になったのでした。
 崕山は全面登山禁止ですが、この山に登る方法が一つだけあります。芦別市が毎年6月頃に実施する『崕山自然保護モニター登山』で、これに応募して当選したら登ることができるのです。しかしながら、大変な競争倍率ということを聞いていましたので応募をしたことはありませんでした。この年初めて当らないだろうと思いつつ応募したところ、見事当選してしまいました。モニター登山は物見遊山の登山ではありません。当選すると事前に誓約書と与えられたテーマでレポートを書いて事務局に提出し、参加負担金も前納します。
 旭川空港からバスで富良野に出て、根室本線を1両だけの快速「狩勝」で芦別に向かいました。モニター登山は二日がかりで行われます。まず前日は『星の降る里百年記念館』で事前研修です。参加者全員による自己紹介と山岡会長から保護活動の状況などを、スライドを使ってたっぷり二時間半の報告がありました。キリギシソウやオオヒラウスユキソウやトチナイソウなどは順調に回復しているとのことでした。モニター登山は25名の募集だったのですが、最終的に参加したのは24名でした。
 宿で朝食が出ないのでコンビニおにぎりで朝食を済ませ、昼食分のおにぎりもコンビニで調達しました。7時に道の駅の駐車場からマイクロバスで出発です。ボランティア4名に山岡会長と総勢29名です。会長は今日が70歳の誕生日とのことでしたが大変にお元気です。天気予報は曇りで午後から雨とのことでしたが、見事に外れて快晴です。三段滝や芦別湖を経由して、登山口となる南端広場に到着しました。登山コースは植生保護の為に残念ですが、高山植物の咲く尾根沿いではなく沢を登ります。一列になって登山開始です。私にとっては初めての沢登りですが、沢靴のおかげで快調です。沢沿いにはイラクサが多く、うっかり触れるとヒリヒリと激しい痛みが走ります。昨日の研修で虫が多いと聞いていたのでスキンガードをスプレーして来ましたが、藪蚊とブユが非常に多いです。休憩で立ち止まっただけで、虫の集団に囲まれます。やがて沢を離れ、砂礫の急斜面になると沢靴は滑って難儀をしました。ボランティアの方が予め張っておいてくれたロープに掴まって登ります。ホテイアツモリソウはコース沿いでも15株位見られました。頂上の少し下の開けた場所で、全員で昼食です。良い天気で惣芦別岳や芦別岳、夕張岳も望めました。
 ここから先がようやく高山らしい岩場になり、しばらく歩くと直ぐに頂上です。但し、植生保護の為にピークの岩場には登らず岩場の直下までです。この岩場の裏の遠くにトチナイソウを見つけました。隣にいた山岡会長も確認してくれました。この場所でトチナイソウを見るのは始めてとのことだそうで、植生が回復している証拠です。大感激ですが、遠すぎてズームレンズの望遠側でも点にしか写りません。下りは登りとは少し離れた別ルートですが、沢までは辛い砂礫の急坂を下ります。最後の40分間は全員で外来植物のセイヨウタンポポ摘みです。摘んでも摘んでも沢山あって、ボランティアの方に終わるように言われてもなかなか終わることが出来ません。 一旦バスに乗り、崕山が見えるところで降りて山の写真を撮らせてもらいました。14時に下山し、15時からの反省会の予定は大幅に遅れました。会場には15時半頃戻り、40分頃から反省会です。全員で登山の感想を述べました。帰りの列車の時間が迫っていたので理由を述べて中座させてもらいました。
 タクシーを呼んで待っていたら、どうやら反省会が終わったらしく会場から次々と参加者が出てきました。あと5分ほどで終わったようです。宿で荷物を受け取り、芦別駅に急ぎ、列車に乗り込みました。ラベンダーの季節にはまだ早いので「臨時特急ラベンダーエクスプレス4号」はガラガラでした。
 今回のモニター登山で嬉しかったのは崕山の植生回復でした。崕山の保護の方法は厳しいかもしれませんが、ここまでしなくては失われつつある自然は守れないのだということを痛感しました。
尾瀬 (2008年5月31日〜6月1日)

 トガクシショウマが見たくなりました。この花も激減しており名前の由来となった戸隠山では見ることは困難なようです。トガクシショウマは尾瀬にも分布するのですが、最近の高山植物の本には乱獲防止の為なのか咲いている場所は書いてありません。20年位前に買った古い本には撮影場所の沢の名前だけが書いてありましたので、この名前を頼りに尾瀬に向かいました。
 当日は雨です。鳩待峠から雨具を着けての出発です。木道が滑り易いのでゆっくり下ります。山ノ鼻に着く頃には霧雨程度になりました。水芭蕉にはまだ少し早い季節。雨は降ったり止んだりです。自生すると言われている沢に近い山小屋に着いて宿泊手続きを済ませると荷物を置いて、雨の中をトガクシショウマを探しに出かけました。細い木道は所々雪に埋まっています。昔の花の本に記載されている沢とは違う小さな沢に差し掛かったところで、登山道脇に下向きの花を一輪つけた植物を見かけました。良く見ると、なんとこれが目的のトガクシショウマです。沢を見上げると片側の斜面に何株ものトガクシショウマが咲いています。足場が悪いので手前の株だけを狙って雨の中で何枚かシャッターを切りました。これは明日が楽しみです。山小屋の部屋には7人が詰め込まれました。小屋に戻って暫くすると雨は上がりました。
 翌日は5時前に起きて外に出てみると、雨は上がり晴れ間も出ているものの霧も時々発生して視界が遮られます。寒い朝で、この季節にこんなに冷え込むとは驚きです。木道は昨日の雨が凍結していて登山靴でも滑って歩き難いです。
 朝食を済ませ、日が昇って木道の氷が溶けた7時に小屋を出ました。昨日と同じ場所でトガクシショウマを撮影しました。良く見ると、花は盛りを過ぎており、花弁の先に少し枯れが入っていいます。沢の上部にある株の花は丁度良さそうなのですが、とても近づけません。昔の花の本に記載されていた沢でも1株だけ蕾をつけたトガクシショウマを見掛けました。沢の上の方にはトガクシショウマの葉らしきものが見えるので、もう少しすると咲くのかもしれません。尾瀬でも日当たりが良くない場所で、最近雪が融けたばかりなのか、倒木が多く進むのに難儀をしました。
 尾瀬ヶ原に戻り見晴に向かいます。この頃から日差しが強くなりました。日が差すとタテヤマリンドウが開き出しました。見晴から尾瀬沼に向かう道は残雪が多く残っています。特に白砂峠は雪に埋もれていました。尾瀬沼の北側を廻り、沼山峠に出ました。沼山峠も最後の下りは残雪が多く残っていました。
 路線バスに2時間揺られ、会津高原尾瀬口駅でようやく食事にありつきました。野岩鉄道から東武鉄道直通の快速列車で帰りました。この列車は3年前にも乗ったのですが、当時と比べて浅草着が約1時間も余計にかかるようになりました。

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