2016年

 今年のテーマは疑惑の写真の解消です。昨年撮影したキバナノアツモリソウはどうやら完全な野生状態ではなさそうです。リシリヒナゲシは2001年の撮影後に偽物騒動が起こりました。そこで、疑惑解消の為に雨飾山に初挑戦し、15年振りに利尻山に登ってきました。
雨飾山 (2016年6月19日)

 昨年入笠山で見たキバナノアツモリソウは、小屋の近くの柵で囲まれた場所で咲いていたものでした。完全な野生状態の花を撮りたいでので、ネットで2年前に見掛けたという情報のある雨飾山に行きました。
 宿の車で登山口まで送ってもらった客は他に5名いましたが、登山口で弁当を食べ始めたので直ぐには登って来そうにありません。駐車場には他に車を見掛けないので本日の第一登山者になるようです。そう思うと今年は熊の事故が多いので本州の山で初めて熊避けの鈴を付けました。最初は少し下って大海川の川沿いに歩きます。昭文社の地図だと登山口から山頂までのポイントは荒菅沢と笹平くらいしかありませんが、宿でくれた絵地図には400mごとの道標があるので歩く目安が付き易いです。この目安がないと途中は目標もなく樹林帯の中の長くて苦しいだけの登山になるところでした。途中で軽装の若者2人に追い抜かれましたが、荒菅沢で二人組を追い抜きました。荒菅沢の雪渓は今年は異常に少ないとのことで、踏み跡がある通常の登山ルートだと雪渓の真ん中が融けて大きな雪庇状態になっており、渡ることができません。雪渓の上部を迂回し渡渉しました。森林限界を抜けるまでに更に4人を追い抜きました。駐車場では車を見掛けなかったのですが、何人かが登っていたようです。森林限界を出ると急に南風が強くなりました。梯子場の急登が続きます。笹平は文字通り一面の笹の群生地です。笹原の中にはギボウシらしき植物が多数ありますが、花穂が出る前の葉だけの状態なのでキバナノアツモリソウと区別が付き難いです。花の種類も少なく、精々山腹でコイワカガミ、森林限界を越えたことろでミヤマカラマツ、笹平でヨツバシオガマやミツバオウレンが咲いている程度です。いくら丁寧に探してもキバナノアツモリソウは見つけられません。山頂直前の急登箇所でシラネアオイを見掛けましたが、この山の個体の花色は紫色が濃いのが特徴のようです。山頂は双耳峰で雲が多く眺望は今ひとつです。北アルプスが雲の間に少しだけ見えました。糸魚川らしき町並みも見えましたが日本海ははっきりしません。下山時もゆっくりと下り、笹原を探しましたがついにキバナノアツモリソウは見つけられませんでした。途中で出逢った人はキバナノアツモリソウすら知らないようでした。笹平を過ぎると後は淡々と下るだけです。下り始めた頃から天気は下り坂になりました。登山口のキャンプ場の管理小屋で缶ビールを飲んでいたら、ポツリポツリと雨が落ちてきました。
利尻山・礼文 (2016年7月7日〜7月8日)

 2001年に利尻山に登った後で、利尻山のリシリヒナゲシの偽物騒動が持ち上がりました。何者かが平地に植えられている近縁の外来種であるチシマヒナゲシやその雑種を利尻山の山頂に植えたことが発覚し、DNA検査をして偽物を駆除しているということでした。前回撮った写真は登山道の脇に咲いていた花なので偽物の可能性が高いのです。15年も経ったので偽物は駆除された頃かと思い利尻山に登ることにしました。
 快晴で、朝日はペシ岬の横から登りました。4時に宿の宿泊客3名と一緒に宿のおばさんに車で登山口まで送ってもらいました。最初は静かな山旅です。少し高度が上がると風が強くなりました。第1見晴台から礼文島が良く見えました。九合目付近から高山植物が現れてきましたが今年は種類は少ないです。八合目から見た利尻山の残雪状態は前回と同じ位だったのですが、今年は少し花期に早いのかバイケイソウの仲間はまだ蕾だし、シュムシュノコギリソウはまだ草丈も伸びていません。エゾツツジやチシマフウロが強風に揺れていました。登山道脇は無理でも、せめて人が立ち入れない崩壊地にはリシリヒナゲシは咲いていないかと見渡しましたが見つからりません。今回はチシマイワブキが目立ちます。諦めかけていたらボタンキンバイが一輪だけ登山道脇に咲いていてくれました。沓形分岐の手前の崩落斜面への立ち入りを規制するロープの下に小さなリシリヒナゲシが一輪だけ花を付けているのを見つけました。夢中で何枚も撮影しました。前回見た蕾の状態のものよりも、かなり花や蕾は小さいです。登りで見掛けたのは、この一輪だけでした。山頂に着いた時にはもう礼文島は雲で覆われて見えなくなっていました。山頂直下の草地にはボタンキンバイの群落が広がっていますが近寄ることは出来ません。下山時に登りで見掛けた場所の少し上部で別のリシリヒナゲシを1株を見掛けました。今度はストロボを使っての撮影です。登りで見掛けた株の方が綺麗なのでじっくり撮りました。九合目の標識の少し下った登山道の横でリシリヒナゲシの大きな株を見掛けました。まさかこんなところにという感じの場所で、登りで全く気付かなかったのが不思議なくらいです。強風で花はボロボロになっており、しかも強風に揺れてなかなか撮影は出来ません。株脇には小さな標識らしきものもあり、これは環境省の調査の証明でしょうか。前回より僅か5分早く下山しました。利尻温泉で汗を流し、ざる蕎麦で遅い昼食です。
 翌日は晴れましたが、台風並みの猛烈な南西の風です。今日は予備日で昨日目的が達成出来たので礼文島に行くことにしたのですが、波も高く礼文島に行けるのか不安です。5時過ぎに外に出ると隣の宿の宿泊客で山に登る予定の人が不安そうに山を眺めていました。フェリー乗り場で聞いたら今日は平常運行をするとのことです。揺れを覚悟で礼文島に行くことにしました。天気は晴れているので雨具は傘だけにしました。フェリーを待っている間に風は少し弱くなったようです。フェリーが出航すると晴れていた天気が曇りだし、すっかり悪くなりました。バスで島の南端の知床に着いた時は、風は強いし雨も少しポツリときました。雨合羽を持ってこなかったことを後悔しました。それでも折角来たのだから灯台まではと思いながら歩き出しました。灯台まではただの笹原が続くだけで、天気が悪いので海に浮かぶ利尻山は全く期待出来ません。灯台に着いたら花が増え出したので、戻っても同じ位歩くことを考えると前進する気になりました。レブンキンバイソウなどが出て来ると更に進む気が出てきます。レブンシオガマ、レブンソウ、レブンウスユキソウが見られました。桃岩展望台コースを歩き終わってもまだ時間がありましたが、フェリー乗り場に行きました。フェリー乗り場二階の食堂で丼セットとエゾバフンウニの軍艦巻きで遅い昼食です。利尻島に戻り、早めに利尻温泉に行って汗を流し、利尻・礼文の旅も終わりました。隣の高山植物展示園に行ってみましたが、ここのリシリヒナゲシも偽物でした。このような公的な場所にもリシリヒナゲシとして堂々と偽物が植えられているのは問題ではないのでしょうか。

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